少子高齢化が進行する日本では、人口減から来る強烈なデフレ圧力に対抗するため長期的なインフレ政策が必要です。アベノミクスによる超金融緩和を経てまさにインフレが顕在化してきましたが、今後も長期的にマイルドなインフレが継続することが想定されます。
インフレが長期化するのであれば、ローンを借りて実物資産に投資する不動産投資は、インフレ対策として非常に有効な資産運用手段となります。実際首都圏の不動産価格は上昇を始めており、賃料も上がりつつあります。
今回は区分マンションにフォーカスした賃料指標、「マンション賃料インデックス」最新版の解説第8弾をお伝えします。全国主要都市の他、区分マンション投資の主戦場である東京23区、そして横浜市・川崎市の各エリアを比較しました。
>>前回レポート:
区分マンション賃料・エリアレポート2024.9版
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1.マンション賃料インデックスについて
マンション賃料インデックスとはアットホーム株式会社・三井住友トラスト基礎研究所(以下、SMTRI)が共同開発した、賃貸マンションの成約事例に基づく賃料指標です。統計的手法を駆使して不動産の個別性の影響を軽減しつつ、アットホームが蓄積しているマンション成約事例が指数化されています。
2009年の第1四半期(1〜3月)を100とした指数で表されており、マンション賃料の動向を時系列でチェックするのに向いています。指数はエリアごとに
・シングルタイプ(18㎡以上30㎡未満)
・コンパクトタイプ(30㎡以上60㎡未満)
・ファミリータイプ(60㎡以上100㎡未満)
の3つと、これらをまとめた総合指数があります。
本レポートでは2024年12月23日に公表された2024年第3四半期版を用いてお伝えします。
※各指標やエリアの定義などの詳細については本レポート最下部に記載しています。
2.全国主要都市
総合指数:全国的な賃料上昇が続く
東京圏では東京23区、横浜・川崎市、埼玉東南部、他のエリアでは仙台市、京都市、大阪市、大阪広域、福岡市において、2009年以降の最高賃料を更新しています。なお、2024年6月からの3ヶ月の平均の上昇率は年率4.85%です。
今回の発表は、2024年7〜9月の賃料動向を示しています。SMTRIは「名古屋を除く全エリアで前年同期比プラスとなっている。名目雇用者報酬の上昇によって、賃貸マンションの維持管理コストの賃料転嫁が可能な状態となり、賃料上昇が続いていると考えられる」と分析しています。
インフレ政策の効果が賃金上昇に反映されはじめ、それが賃料上昇につながってるようです。
今回も総合指数の全国トップは大阪市の134.98ptで、コロナ禍前から続き23四半期連続の首位キープとなりました。2位〜5位の仙台市、札幌市、東京23区、福岡市はいずれも2009年対比で20%以上の賃料上昇が見られています。
物件タイプ別
全国主要都市の上昇率を物件タイプ別にグラフ化したものが下図です。
総じて「ファミリー > コンパクト > シングル」の順で賃料上昇率が高なっています。
3.東京23区・エリア別
次に、区分マンション投資の主戦場である東京23区を取り上げます。
SMTRIは「2024年Q3の前年同期比で+4.7ptとなり、2023年Q1以降、賃料上昇が継続。価格高騰が続く分譲マンションの着工戸数が減少し、販売戸数も絞られており、また賃貸マンションにおけるファミリータイプの需要は増加傾向で需給はさらに逼迫している」と分析しています。
総合指数
総合指数では、前回首位の「日本橋・人形町」が引き続き1位をキープしています。上位陣は中央区・港区といった都心部が占めており、「渋谷・恵比寿」の順位が16位から4位へジャンプアップしています。
シングルタイプ
シングルタイプでは前回首位の「白金・高輪」が3位へ後退。「日本橋・人形町」がトップとなりました。「銀座・新富町」を加えた上位3位の地域で上昇率が20%を超えています。また、前回19位だった「渋谷・恵比寿」が5位へと大幅にランクアップしています。
コンパクトタイプ
コンパクトタイプ(30㎡〜60㎡)は投資目的だけでなく住宅ローンを利用した実需目的の売買も視野に入る面積帯です。
こちらも「日本橋・人形町」が首位をキープする一方、前回4位の「渋谷・恵比寿」が2位にランクアップしています。20%を超える賃料上昇をしている地域が前回の8エリアから14エリアへ拡大しており、シングル以上の賃料上昇が実現しています。
ファミリータイプ
変動が大きいファミリータイプでは「三田・芝公園」が首位に返り咲きました。上昇率は驚異の106%超であり、リーマン・ショック後の2009年対比で2倍以上の伸びとなります。
一方で、前回首位だった「銀座・新富町」が前期比92%の下落となり、ファミリータイプは前期比との変動が大きいと言えます。シングルやコンパクトに比べ個別物件がインデックスに与える影響が大きいとみられます。
タイプ別
最後に、以下が東京23区各エリアの直近値を改めて切り出したグラフです。
「ファミリー > コンパクト > シングル」の順で上昇率が高い点は全国同様となっています。
4.横浜市&川崎市・エリア別
次に横浜市・川崎市をチェックしましょう。
総合指数
横浜市・川崎市の総合指数は東京23区と比較すると変動が小さいものの、全エリアで上昇トレンドを維持しています。
シングルタイプ
シングルタイプは今回「石川町・関内」や「宮崎台・たまプラーザ」が上昇しました。
コンパクトタイプ
東京23区同様、横浜市・川崎市でもコンパクトタイプは全体的にシングルタイプよりも上昇率が大きくなっています。上位4位までで上昇率は20%を超えています。
ファミリータイプ
ファミリータイプは総じて賃料上昇率が大きく、上位7エリアで20%以上の賃料上昇率となっています。
「横浜・桜木町」や「石川町・関内」などは40%を超える大きな賃料上昇となっています。
タイプ別
東京23区同様、多くの地域でファミリータイプ賃料の上昇が突出しています。シングル・コンパクトタイプは、ややムラはあるもののエリアによる差は大きくなく、全体的に堅調推移しています。
マンションデベロッパーにとっては東京23区に比べると横浜市・川崎市は用地仕入れが容易で、新築マンションの分譲が継続することで賃料を引き上げているものと考えられます。
5.まとめ
いかがでしたか。
依然として緩和的な金融環境やインフレ、税制面(住宅ローン減税)などを背景に全国的にはマンション賃料が長期的な上昇トレンドを描いていますが、その中でも面積帯の広い物件の賃料上昇が全体を牽引していることや、エリアごとの賃貸ニーズの棲み分けや特性が確認されました。
区分マンション投資におけるより良いエリア・物件選定や投資判断に、ぜひ本レポートをお役立てください。
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マンション賃料インデックス各指標の定義等について
<インデックス算出条件>
・建物構造:RC(鉄筋コンクリート造)、SRC(鉄骨鉄筋コンクリート造)
・駅から徒歩15分以内
・住戸面積:18㎡以上100㎡未満
<物件タイプ>
・シングルタイプ:18㎡以上30㎡未満
・コンパクトタイプ:30㎡以上60㎡未満
・ファミリータイプ:60㎡以上100㎡未満
・総合:18㎡以上100㎡未満
<エリアと駅名>
(東京23区)
四谷・麹町:麹町・半蔵門・市ヶ谷・四谷
日本橋・人形町:小伝馬町・茅場町・人形町・日本橋・馬喰横山・浜町・新日本橋・馬喰町・三越 前・水天宮前
月島・勝どき:月島・勝どき
赤坂・六本木:神谷町・六本木・赤坂・乃木坂・六本木一丁目
広尾・麻布:広尾・麻布十番
三田・芝公園:大門・三田・御成門・芝公園・浜松町・田町・赤羽橋
白金・高輪:泉岳寺・高輪台・白金台・白金高輪
新宿:新宿・新宿御苑前・西新宿・新宿三丁目・西武新宿・東新宿・代々木
曙橋・若松河田:四谷三丁目・曙橋・若松河田・牛込柳町
飯田橋・神楽坂:江戸川橋・神楽坂・飯田橋・牛込神楽坂
青山・原宿:原宿・明治神宮前・青山一丁目・外苑前・表参道
渋谷・恵比寿:恵比寿・渋谷・神泉・代官山
代々木:代々木公園・代々木上原・初台・幡ヶ谷・参宮橋・代々木八幡
春日・白山:後楽園・千石・白山・春日
中目黒・自由が丘:中目黒・祐天寺・学芸大学・都立大学・自由が丘
池尻大橋・二子玉川:池尻大橋・三軒茶屋・駒沢大学・桜新町・用賀・二子玉川
東中野・西荻窪:東中野・中野・高円寺・阿佐ヶ谷・荻窪・西荻窪
銀座・新富町:銀座・京橋・八丁堀・築地・東銀座・銀座一丁目・新富町・宝町・築地市場
神保町・秋葉原:神田・秋葉原・淡路町・新御茶ノ水・岩本町・小川町・神保町・九段下
門前仲町・葛西:門前仲町・木場・東陽町・南砂町・西葛西・葛西
池袋:池袋・東池袋・大塚
(横浜市・川崎市)
横浜・桜木町:横浜、桜木町
石川町・関内:石川町、元町・中華街、関内、伊勢佐木長者町
川崎・鶴見:鶴見、京急鶴見、川崎、京急川崎、八丁畷、鶴見市場
新丸子-綱島:新丸子、武蔵小杉、元住吉、日吉、綱島
菊名・新横浜:大倉山、菊名、新横浜
二子新地・梶ヶ谷:二子新地、高津、溝の口、梶が谷
宮崎台・たまプラーザ:宮崎台、宮前平、鷺沼、たまプラーザ
あざみ野・青葉台:あざみ野、江田、市が尾、藤が丘、青葉台
中川・仲町台:中川、センター北、センター南、仲町台
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