不動産を購入して貸し出し、賃料を得る不動産投資。近年は老後の年金対策や不動産投資ローンに付随する保険「団信」の効果などから、株式投資や投資信託などと並ぶ資産形成手段の1つとして注目されています。
不動産投資の成功のためには、「賃料を安定して確保できるか」が重要です。不動産価格は賃料を利回りで割り算する「収益還元法」で求めることが一般的であり、賃料の上下は資産価値に直結するためです。
今回は区分マンションにフォーカスした賃料指標、「マンション賃料インデックス」最新版の解説第6弾をお伝えします。全国主要都市の他、区分マンション投資の主戦場である東京23区、そして横浜市・川崎市の各エリアを比較しました。
>>前回レポート:
区分マンション賃料・エリアレポート2024.3版
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1.マンション賃料インデックスについて
マンション賃料インデックスとはアットホーム株式会社・三井住友トラスト基礎研究所(以下、SMTRI)が共同開発した、賃貸マンションの成約事例に基づく賃料指標です。統計的手法を駆使して不動産の個別性の影響を軽減しつつ、アットホームが蓄積しているマンション成約事例が指数化されています。
2009年の第1四半期(1〜3月)を100とした指数で表されており、マンション賃料の動向を時系列でチェックするのに向いています。指数はエリアごとに
・シングルタイプ(18㎡以上30㎡未満)
・コンパクトタイプ(30㎡以上60㎡未満)
・ファミリータイプ(60㎡以上100㎡未満)
の3つと、これらをまとめた総合指数があります。
本レポートでは2024年6月21日に公表された2024年第1四半期版を用いてお伝えします。
※各指標やエリアの定義などの詳細については本レポート最下部に記載しています。
2.全国主要都市
総合指数:全国的な賃料上昇が続く
停滞している名古屋市を除き、すべてのエリアが過去最高を更新しました。
全国的に2%前後のインフレが進行する中、賃料にもそれが反映されていることの証左と言えるでしょう。
今回の発表は、2024年1〜3月の賃料動向を示しています。全国的な賃料上昇についてSMTRIは「入居者が入れ替わる就学・就業シーズンに賃料を上げる動きが全国的に活発。全国的に人件費や資材価格の高騰を起因とする住宅維持管理コストの増加が賃料の上昇圧力となっている」と分析しました。
季節要因があるとは言え、入居者の入れ替わりタイミングでオーナー側が強気の賃料設定をしつつ、それが市場に受け入れられているものと見られます。
今回も総合指数の全国トップは大阪市の130.1ptで、コロナ禍前から続き22四半期連続の首位キープとなりました。
以下、2位〜5位の札幌市、仙台市、福岡市、京都市はいずれも2009年対比で20%以上の賃料上昇が見られています。
物件タイプ別
全国主要都市の上昇率を物件タイプ別にグラフ化したものが下図です。
総じて「ファミリー > コンパクト > シングル」の順で賃料上昇率が高い傾向も不変ですが、東京23区や横浜・川崎といった首都圏、大阪市・京都市といった近畿圏はコンパクトタイプが健闘していることも特徴的です。
3.東京23区・エリア別
次に、区分マンション投資の主戦場である東京23区を取り上げます。
総合指数
総合指数では、前回首位の「日本橋・人形町」が引き続き1位をキープしています。上位陣は中央区・港区といった都心部が占めています。
シングルタイプ
シングルタイプでは引き続き「日本橋・人形町」が首位をキープしました。上昇率は唯一20%を超えており、他を圧倒しています。
総合指数同様に中央区が強いほか、「四谷・麹町」「曙橋・若松河田」といった新宿区エリアも上位につけています。東京駅や日本橋、新宿といったオフィス街へのアクセスの良いエリアの単身者ニーズの高さが伺えます。
コンパクトタイプ
コンパクトタイプ(30㎡〜60㎡)は投資目的だけでなく住宅ローンを利用した実需目的の売買も視野に入る面積帯です。
こちらも「日本橋・人形町」が首位をキープしています。上位11エリアの上昇率が20%を超えており、シングルタイプ以上に賃貸ニーズの高さが伺えます。
ファミリータイプ
上位陣と下位陣の差が激しいファミリータイプでは「三田・芝公園」が首位をキープしています。上昇率は脅威の99%超であり、リーマン・ショック後の2009年対比でほぼ倍増となります。
ファミリータイプは比較的入退去の入れ替わり頻度が低いとされていますが、前期比の増減値が大きいことを踏まえると、シングルやコンパクトに比べ個別性の影響が高い側面があるとみられます。
タイプ別
最後に、以下が東京23区各エリアの直近値を改めて切り出したグラフです。
「ファミリー > コンパクト > シングル」の順で上昇率が高い点は全国同様となっています。
4.横浜市&川崎市・エリア別
次に横浜市・川崎市をチェックしましょう。
総合指数
横浜市・川崎市の総合指数は東京23区と比較すると変動が小さいものの、全エリアで上昇トレンドを維持しています。
シングルタイプ
シングルタイプは今回順位の入れ替わりがやや多くなっていますが、概ね「横浜・桜木町」「川崎・鶴見」あたりが上位にランクインする傾向は変わっていません。
コンパクトタイプ
東京23区同様、横浜市・川崎市でもコンパクトタイプは全体的にシングルタイプよりも上昇率が大きくなっています。こちらは前期比で上位2エリアに変動ありませんでした。
ファミリータイプ
ファミリータイプは上位と下位で上昇率に開きが出ています。今回は前回7位の「石川町・関内」が大きく順位を上げました。
こちらも東京23区同様、シングル・コンパクトに比べると個別性の影響が出ているものと考えられます。
タイプ別
東京23区同様、多くの地域でファミリータイプ賃料の上昇が突出しています。シングル・コンパクトタイプは、ややムラはあるもののエリアによる差は大きくなく、全体的に堅調推移しています。
マンションデベロッパーにとっては東京23区に比べると横浜市・川崎市は用地仕入れが容易で、新築マンションの分譲が継続することで賃料を引き上げているものと考えられます。
5.まとめ
いかがでしたか。
依然として緩和的な金融環境やインフレ、税制面(住宅ローン減税)などを背景に全国的にはマンション賃料が長期的な上昇トレンドを描いていますが、その中でも面積帯の広い物件の賃料上昇が全体を牽引していることや、エリアごとの賃貸ニーズの棲み分けや特性が確認されました。
区分マンション投資におけるより良いエリア・物件選定や投資判断に、ぜひ本レポートをお役立てください。
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マンション賃料インデックス各指標の定義等について
<インデックス算出条件>
・建物構造:RC(鉄筋コンクリート造)、SRC(鉄骨鉄筋コンクリート造)
・駅から徒歩15分以内
・住戸面積:18㎡以上100㎡未満
<物件タイプ>
・シングルタイプ:18㎡以上30㎡未満
・コンパクトタイプ:30㎡以上60㎡未満
・ファミリータイプ:60㎡以上100㎡未満
・総合:18㎡以上100㎡未満
<エリアと駅名>
(東京23区)
四谷・麹町:麹町・半蔵門・市ヶ谷・四谷
日本橋・人形町:小伝馬町・茅場町・人形町・日本橋・馬喰横山・浜町・新日本橋・馬喰町・三越 前・水天宮前
月島・勝どき:月島・勝どき
赤坂・六本木:神谷町・六本木・赤坂・乃木坂・六本木一丁目
広尾・麻布:広尾・麻布十番
三田・芝公園:大門・三田・御成門・芝公園・浜松町・田町・赤羽橋
白金・高輪:泉岳寺・高輪台・白金台・白金高輪
新宿:新宿・新宿御苑前・西新宿・新宿三丁目・西武新宿・東新宿・代々木
曙橋・若松河田:四谷三丁目・曙橋・若松河田・牛込柳町
飯田橋・神楽坂:江戸川橋・神楽坂・飯田橋・牛込神楽坂
青山・原宿:原宿・明治神宮前・青山一丁目・外苑前・表参道
渋谷・恵比寿:恵比寿・渋谷・神泉・代官山
代々木:代々木公園・代々木上原・初台・幡ヶ谷・参宮橋・代々木八幡
春日・白山:後楽園・千石・白山・春日
中目黒・自由が丘:中目黒・祐天寺・学芸大学・都立大学・自由が丘
池尻大橋・二子玉川:池尻大橋・三軒茶屋・駒沢大学・桜新町・用賀・二子玉川
東中野・西荻窪:東中野・中野・高円寺・阿佐ヶ谷・荻窪・西荻窪
銀座・新富町:銀座・京橋・八丁堀・築地・東銀座・銀座一丁目・新富町・宝町・築地市場
神保町・秋葉原:神田・秋葉原・淡路町・新御茶ノ水・岩本町・小川町・神保町・九段下
門前仲町・葛西:門前仲町・木場・東陽町・南砂町・西葛西・葛西
池袋:池袋・東池袋・大塚
(横浜市・川崎市)
横浜・桜木町:横浜、桜木町
石川町・関内:石川町、元町・中華街、関内、伊勢佐木長者町
川崎・鶴見:鶴見、京急鶴見、川崎、京急川崎、八丁畷、鶴見市場
新丸子-綱島:新丸子、武蔵小杉、元住吉、日吉、綱島
菊名・新横浜:大倉山、菊名、新横浜
二子新地・梶ヶ谷:二子新地、高津、溝の口、梶が谷
宮崎台・たまプラーザ:宮崎台、宮前平、鷺沼、たまプラーザ
あざみ野・青葉台:あざみ野、江田、市が尾、藤が丘、青葉台
中川・仲町台:中川、センター北、センター南、仲町台
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