不動産を購入して貸し出し、賃料を得る不動産投資。近年は老後の年金対策や不動産投資ローンに付随する保険「団信」の効果などから、株式投資や投資信託などと並ぶ資産形成手段の1つとして注目されています。

不動産投資の成功のためには、「賃料を安定して確保できるか」が重要です。不動産価格は賃料を利回りで割り算する「収益還元法」で求めることが一般的であり、賃料の上下は資産価値に直結するためです。

      

今回は区分マンションにフォーカスした賃料指標、「マンション賃料インデックス」最新版の解説第5弾をお伝えします。全国主要都市の他、区分マンション投資の主戦場である東京23区、そして横浜市・川崎市の各エリアを比較しました。

      

>>前回レポート:

区分マンション賃料・エリアレポート2023.12版

      

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1.マンション賃料インデックスについて
      

マンション賃料インデックスとはアットホーム株式会社・三井住友トラスト基礎研究所(以下、SMTRI)が共同開発した、賃貸マンションの成約事例に基づく賃料指標です。統計的手法を駆使して不動産の個別性の影響を軽減しつつ、アットホームが蓄積しているマンション成約事例が指数化されています。

2009年の第1四半期(1〜3月)を100とした指数で表されており、マンション賃料の動向を時系列でチェックするのに向いています。指数はエリアごとに

      

・シングルタイプ(18㎡以上30㎡未満)

・コンパクトタイプ(30㎡以上60㎡未満)

・ファミリータイプ(60㎡以上100㎡未満)

      

の3つと、これらをまとめた総合指数があります。

本レポートでは2024年3月25日に公表された2023年第4四半期版を用いてお伝えします。

      

※各指標やエリアの定義などの詳細については本レポート最下部に記載しています。
      

2.全国主要都市

総合指数:9エリアで史上最高値を更新

      

名古屋市の賃料は引き続き停滞している一方で、その他11エリアは上昇傾向にあります。前回史上最高値を記録した「東京23区」「大阪市」「大阪広域」を含め、今回は9つのエリアで史上最高値を更新しました。
      

      

全国的な賃料上昇は、昨今の賃金上昇による借り主の賃料支払い余力の向上、物価上昇に伴う貸し主の賃料増額交渉、さらには分譲マンション価格の高騰による賃貸需要の増加(買う方がお得か借りた方がお得かの天秤)が相互に影響し合っているものとみられ、SMTRIも同様の見解を示しています。
      

全国のエリア比較では、今回も総合指数の全国トップは大阪市の128.9ptで21四半期連続の首位キープとなります。SMTRIは「インバウンド・日本人観光客増加に伴う飲食・宿泊サービス業等の雇用回復や万博開催に向けた準備により、賃貸マンション需要が拡大。中でも他都市に比べ供給割合が小さく、需給が逼迫するコンパクト・ファミリータイプは特に上昇率が高い」と分析しています。

      

以下、2位仙台市、3位札幌市、4位京都市、5位東京23区といずれも20%前後の賃料上昇が見られています。依然として低迷が続く名古屋市は再びマイナス圏に沈んでおり、全国主要都市の中で唯一、2009年1Qに比べ賃料が低下している現状が浮き彫りとなっています。

      

      

物件タイプ別

全国主要都市の上昇率を物件タイプ別にグラフ化したものが下図です。

      

      

総合全国トップ3の大阪市・仙台市・札幌市に見られるように、総じて「ファミリー > コンパクト > シングル」の順で賃料上昇率が高いという傾向が続いています。

住宅ローン減税の恩恵や金融緩和、さらにはコロナ禍を経て「もう一部屋」「もうひとまわり」大きな居住環境を求める層が増加した(2023年3月版レポート)ことから、不動産価格の高騰はより面積の広い物件が牽引役となってきたことが考えられます。

      

総合指数の低調さが際立つ名古屋市はコンパクトタイプが若干改善したものの、ファミリータイプが-16.4%、シングルタイプが約+8.6ポイントと、前四半期よりも悪化しています。

(名古屋の賃料低迷要因は2023年6月版レポートで当社INVASE事業責任者・渕ノ上による解説を掲載しています。)
      

3.東京23区・エリア別

次に、区分マンション投資の主戦場である東京23区を取り上げます。
      

総合指数

      

総合指数では、前回首位の「日本橋・人形町」が引き続き1位をキープしています。前々回1位の「三田・芝公園」は前回は2位、今回は3位という結果となり、下降傾向にあります。前回最下位の代々木は引き続き最下位となっています。

      

シングルタイプ

      

シングルタイプでは「日本橋・人形町」が引き続き首位をキープしました。上昇率は25%を超えており、他を圧倒していると言えるでしょう。前回ジャンプアップした「月島・勝どき」は1つ順位を下げています。

前四半期の上振れの反動か、「青山・原宿」は大きく低下し再びマイナス圏に転じました。
      

      

コンパクトタイプ

コンパクトタイプ(30㎡〜60㎡)は投資目的だけでなく住宅ローンを利用した実需目的の売買も視野に入る面積帯です。

      

「三田・芝公園」に代わり、前回3位の「日本橋・人形町」がシングルタイプに続いて首位に浮上しました。また、前々回10位の「月島・勝どき」は前回4位、今回は2位と急激な躍進を遂げています。HARUMI FRAGの賃貸募集開始の影響が表れ始めているものとその他では前回14位の「渋谷・恵比寿」が3位にジャンプアップ、また、前回2位だった「新宿」は7位に低下となっています。

      

ファミリータイプ

上位陣と下位陣の差が激しいファミリータイプでは、前四半期の1位・2位が入れ替わり、「三田・芝公園」が首位を奪還しました。

「広尾・麻布」は麻布台ヒルズの竣工の影響の剥落か、上昇率は大きく低下しました。ファミリータイプは新規分譲などの影響を受けやすいと推察され、前期比との変化幅が大きいエリアが散見されます。
      

     
※データがない春日・白山、神保町・秋葉原の2エリアは割愛しています。また、ファミリータイプはデータの欠損等を踏まえ、順位変動を表示していません。

      

タイプ別

最後に、以下が東京23区各エリアの直近値を改めて切り出したグラフです。

「ファミリー > コンパクト > シングル」の傾向は全国データ同様ですが、東京23区はファミリータイプが他2タイプを大幅にアウトパフォームしている傾向が見受けられます。
      

      

4.横浜市&川崎市・エリア別

次に横浜市・川崎市をチェックしましょう。
      

総合指数

横浜市・川崎市の総合指数は東京23区と比較すると変動が小さいものの、引き続き2017年頃から続く上昇トレンドを、すべてのエリアで維持しています。なお、「二子新地・梶ケ谷」は物件タイプに関わらずアンダーパフォームしています。

      

シングルタイプ

シングルタイプは2015年付近を起点として上昇トレンドを形成しています。

前四半期8位の「菊名・新横浜」が6%上昇し、今回トップになりました。

      

      

コンパクトタイプ

コンパクトタイプは2018年付近から上昇トレンドが始まり、現在も継続中です。

前期比で下落したエリアが少なく、全体的に堅調な推移となりました。「石川町・関内」が首位に立ち、前四半期に唯一上場率が20%を超えていた「宮崎台・たまプラーザ」は3位に転落しました。

      

      

ファミリータイプ

ファミリータイプはシングルタイプ、コンパクトタイプから遅れて上昇トレンドとなり、2020年付近から全エリアで上昇トレンドが始まっています。

上位2エリアの上昇率が30%を超えており、前回から首位キープの「横浜・桜木町」は堅調さを維持しています。また、2位「中川・仲町台」は前期比 -2%となりましたが引き続き上昇率30%を超えています。

      

一方で、今回シングル・コンパクトで好調な「石川町・関内」は、ファミリータイプでは今回大幅に順位を落とし、7位となりました。
      

      

タイプ別

東京23区同様、多くの地域でファミリータイプ賃料の上昇が顕著です。

シングル・コンパクトタイプは、ややムラはあるもののエリアによる差は大きくなく、全体的に堅調推移しています。不動産デベロッパーにとっては東京23区に比べると横浜市・川崎市は用地仕入れが容易で、新築マンションの分譲が継続することで賃料を引き上げているものと考えられます。

      

      

4.まとめ

      

いかがでしたか。

住宅ローン減税といった税制面やインフレ、長期的な金融緩和などを背景に全国的にはマンション賃料が長期的な上昇トレンドを描いていますが、その中でも面積帯の広い物件の賃料上昇が全体を牽引していることや、エリアごとの賃貸ニーズの棲み分けや特性が確認されました。

区分マンション投資におけるより良いエリア・物件選定や投資判断に、ぜひ本レポートをお役立てください。

      

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マンション賃料インデックス各指標の定義等について

<インデックス算出条件>

・建物構造:RC(鉄筋コンクリート造)、SRC(鉄骨鉄筋コンクリート造)

・駅から徒歩15分以内

・住戸面積:18㎡以上100㎡未満

        

<物件タイプ>

・シングルタイプ:18㎡以上30㎡未満

・コンパクトタイプ:30㎡以上60㎡未満

・ファミリータイプ:60㎡以上100㎡未満

・総合:18㎡以上100㎡未満

        

<エリアと駅名>

(東京23区)

四谷・麹町:麹町・半蔵門・市ヶ谷・四谷

日本橋・人形町:小伝馬町・茅場町・人形町・日本橋・馬喰横山・浜町・新日本橋・馬喰町・三越 前・水天宮前

月島・勝どき:月島・勝どき

赤坂・六本木:神谷町・六本木・赤坂・乃木坂・六本木一丁目

広尾・麻布:広尾・麻布十番

三田・芝公園:大門・三田・御成門・芝公園・浜松町・田町・赤羽橋

白金・高輪:泉岳寺・高輪台・白金台・白金高輪

新宿:新宿・新宿御苑前・西新宿・新宿三丁目・西武新宿・東新宿・代々木

曙橋・若松河田:四谷三丁目・曙橋・若松河田・牛込柳町

飯田橋・神楽坂:江戸川橋・神楽坂・飯田橋・牛込神楽坂

青山・原宿:原宿・明治神宮前・青山一丁目・外苑前・表参道

渋谷・恵比寿:恵比寿・渋谷・神泉・代官山

代々木:代々木公園・代々木上原・初台・幡ヶ谷・参宮橋・代々木八幡

春日・白山:後楽園・千石・白山・春日

中目黒・自由が丘:中目黒・祐天寺・学芸大学・都立大学・自由が丘

池尻大橋・二子玉川:池尻大橋・三軒茶屋・駒沢大学・桜新町・用賀・二子玉川

東中野・西荻窪:東中野・中野・高円寺・阿佐ヶ谷・荻窪・西荻窪

銀座・新富町:銀座・京橋・八丁堀・築地・東銀座・銀座一丁目・新富町・宝町・築地市場

神保町・秋葉原:神田・秋葉原・淡路町・新御茶ノ水・岩本町・小川町・神保町・九段下

門前仲町・葛西:門前仲町・木場・東陽町・南砂町・西葛西・葛西

池袋:池袋・東池袋・大塚

        

(横浜市・川崎市)

横浜・桜木町:横浜、桜木町

石川町・関内:石川町、元町・中華街、関内、伊勢佐木長者町

川崎・鶴見:鶴見、京急鶴見、川崎、京急川崎、八丁畷、鶴見市場

新丸子-綱島:新丸子、武蔵小杉、元住吉、日吉、綱島

菊名・新横浜:大倉山、菊名、新横浜

二子新地・梶ヶ谷:二子新地、高津、溝の口、梶が谷

宮崎台・たまプラーザ:宮崎台、宮前平、鷺沼、たまプラーザ

あざみ野・青葉台:あざみ野、江田、市が尾、藤が丘、青葉台

中川・仲町台:中川、センター北、センター南、仲町台

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