不動産を購入して貸し出し、賃料を得る不動産投資。近年は老後の年金対策や不動産投資ローンに付随する保険「団信」の効果などから、株式投資や投資信託などと並ぶ資産形成手段の1つとして注目されています。

不動産投資の成功のためには、「賃料を安定して確保できるか」が重要です。不動産価格は賃料を利回りで割り算する「収益還元法」で求めることが一般的であり、賃料の上下は資産価値に直結するためです。

           

今回は区分マンションにフォーカスした賃料指標、「マンション賃料インデックス」最新版の解説第4弾をお伝えします。全国主要都市の他、区分マンション投資の主戦場である東京23区、そして横浜市・川崎市の各エリアを比較しました。

           

>>前回レポート:

区分マンション賃料・エリアレポート2023.9版

           

1.マンション賃料インデックスについて    

マンション賃料インデックスとはアットホーム株式会社・三井住友トラスト基礎研究所(以下、SMTRI)が共同開発した、賃貸マンションの成約事例に基づく賃料指標です。統計的手法を駆使して不動産の個別性の影響を軽減しつつ、アットホームが蓄積しているマンション成約事例が指数化されています。

2009年の第1四半期(1〜3月)を100とした指数で表されており、マンション賃料の動向を時系列でチェックするのに向いています。指数はエリアごとに

・シングルタイプ(18㎡以上30㎡未満)

・コンパクトタイプ(30㎡以上60㎡未満)

・ファミリータイプ(60㎡以上100㎡未満)

の3つと、これらをまとめた総合指数があります。

本レポートでは2023年12月21日に公表された2023年第3四半期版を用いてお伝えします。

        

※各指標やエリアの定義などの詳細については本レポート最下部に記載しています。

        

2.全国主要都市

総合指数:東京・大阪が史上最高値を更新

全国的な賃料上昇トレンドが継続する中、直近値は札幌を除く全エリアでプラスとなりました。「東京23区」「大阪市」「大阪広域」の3エリアは過去最高値を更新しており、日本を代表する2大都市の賃料上昇トレンドは健在です。

全国的な賃料上昇について、SMTRIは「分譲マンションの発売価格高騰に伴う買い控えにより、賃貸マンションでの居住継続を選択するケースが増加し、需給が逼迫している」と解説しています。また、「入居者の入れ替わりのタイミングで賃料が上げられているケースが多いため、転居希望者は転居しにくい状況」とも分析しており、不動産オーナーは入退去時に強気の賃料設定を行っていることが推察されます。

           

全国のエリア比較では、今回も総合指数の全国トップは大阪市の127.8ptで20四半期連続の首位キープとなります。SMTRIは「飲食・宿泊サービス業の雇用回復や万博開催」を要因と挙げており、旺盛な賃貸需要がデータとして表れているといえるでしょう。

ただし、大阪市の中でも物件タイプによって差が出ており、SMTRIは「供給量の少ないファミリータイプは需要逼迫で賃料上昇が顕著な一方、物件供給が多かったシングルタイプは賃料が横ばい推移になっている」と解説しています。

           

以下、2位札幌市、3位仙台市、4位京都市、6位福岡市といずれも15%〜20%程度の賃料上昇が見られ、地方の主要都市は引き続き健闘しています。また、首都圏では引き続き東京23区・都下での賃料格差は拡大しているようです。

今回も名古屋市が15四半期連続の最下位となりましたが、指数はプラス圏に浮上しました。

物件タイプ別

全国主要都市の上昇率を物件タイプ別にグラフ化したものが下図です。

総合全国トップ3の大阪市・札幌市・仙台市に見られるように、総じて「ファミリー > コンパクト > シングル」の順で賃料上昇率が高いという傾向は変わっていません。理由としては住宅ローン減税の恩恵や金融緩和、さらにはコロナ禍を経て「もう一部屋」「もうひとまわり」大きな居住環境を求める層が増加した(2023年3月版レポート)ことから、不動産価格の高騰はより面積の広い物件が牽引役となってきたことが考えられます。

           

総合指数の低調さが際立つ名古屋市はファミリータイプが-13.3%と前四半期から悪化した一方、シングルタイプが約1.2ポイント、コンパクトタイプが約1.9ポイント上昇し、総合指数の下支えとなりました。

(名古屋の賃料低迷要因は前々回レポートで当社INVASE事業責任者・渕ノ上による解説を掲載しています。)

           

3.東京23区・エリア別

次に、区分マンション投資の主戦場である東京23区を取り上げます。

        

総合指数

総合指数では前回首位の「三田・芝公園」を「日本橋・人形町」が逆転して1位となりました。今四半期は全体的に順位の変動が激しく、前回16位であった「月島・勝どき」が9ポイント以上上昇して3位へ躍進しました。

前期比で減少しているエリアも複数ありますが、引き続き上昇トレンドは継続しています。

シングルタイプ

シングルタイプでは「日本橋・人形町」が引き続き首位をキープしました。「月島・勝どき」が前回の13位から上昇幅を伴って大幅に順位を上げました。シングルタイプを含めたHARUMI FRAGの賃貸募集の開始による街開きや、湾岸エリアの物件価格上昇の影響が表れているものと推察されます。

           

また、「青山・原宿」が8.3ポイント上昇して初めてプラス圏に浮上しました。用地仕入れの難しい土地柄から新築物件の供給が少なく、老朽化や賃貸ニーズの変化により賃料下落が顕著なエリアでしたが、変化が起こり始めている可能性があります。

コンパクトタイプ

コンパクトタイプ(30㎡〜60㎡)は投資目的だけでなく住宅ローンを利用した実需目的の売買も視野に入る面積帯となります。コンパクトタイプも前回10位だった「月島・勝どき」が7ポイント上昇し大幅に順位を上げました。

1位「三田・芝公園」3位「日本橋・人形町」は順位の変動はなく、前期比で上昇は一服しているように見受けられます。引き続き中央区・港区・千代田区といった都心部の需要の高さが伺えます。なお、前期2位だった「神保町・秋葉原」は5ポイント以上下落し、順位は8位に転落しました。

ファミリータイプ

ファミリータイプでは上昇率40%を超えるエリアが増加しました。上位勢と下位勢では前期比での上昇率に大きな開きが出ています。

今回首位に浮上した「広尾・麻布」は上昇率が80%に迫りました。麻布台ヒルズの竣工により同エリアの賃貸マーケットが活況になっているものと考えられます。

また、8位以下のエリアを見ると半数のエリアが前四半期比で下落しており、上位陣と下位陣の格差が大幅に拡大しました。

最下位の「中目黒・自由が丘」は唯一マイナス圏に転落しました。

※データの一部がない四谷・麹町、日本橋・人形町、曙橋・若松河田、渋谷・恵比寿、銀座・新富町、神保町・秋葉原の6エリアは割愛

           

タイプ別

最後に、以下が東京23区各エリアの直近値を改めて切り出したグラフです。

「ファミリー > コンパクト > シングル」の傾向は全国データ同様ですが、東京23区はファミリータイプが他2タイプを大幅にアウトパフォームしている傾向が見受けられます。

「中目黒・自由が丘」のファミリータイプが唯一、わずかにマイナス値となりました。

※ファミリータイプで記載の無かったエリアも含む

           

3.横浜市&川崎市・エリア別

次に横浜市・川崎市を取り上げます。

           

総合指数

横浜市・川崎市の総合指数は東京23区と比較すると変動が小さいものの、引き続き2017年頃から続く上昇トレンドをすべてのエリアで維持しています。上昇率トップは「中川・仲町台」で、前四半期に引き続き20%を超える上昇率となりました。

シングルタイプ

シングルタイプは2015年付近を起点として上昇トレンドを形成しています。

前期に賃料が大幅上昇した地域の多くが反動減となり、「菊名・新横浜」が8.5ポイントのマイナス(前期は9.58ポイント上昇)、「宮崎台・たまプラーザ」が約4.8ポイントのマイナス(前期は4.31ポイント上昇)、「横浜・桜木町」が3.34ポイントのマイナス(前期は4.89ポイント上昇)となりました。

前四半期に5.08ポイント上昇した「あざみ野・青葉台」は下落幅が限定的でした。

コンパクトタイプ

コンパクトタイプは2018年付近から上昇トレンドが始まり、現在も継続中です。

前期比で下落したエリアが少なく、全体的に堅調な推移となりました。引き続き「宮崎台・たまプラーザ」が上昇率トップで、同エリアでは初めて20%を超える上昇となりました。

また、前回2位の「新丸子・綱島」が若干の反動減で3位に転落し、前回3位の「横浜・桜木町」が順位を1つ上げました。

ファミリータイプ

ファミリータイプはシングルタイプ、コンパクトタイプから遅れて上昇トレンドとなり、2020年付近から全エリアで上昇トレンドが始まっています。

前期に引き続き1位〜3位の上昇率が30%を超え、前回から1位キープの「横浜・桜木町」は堅調に推移し37.30%の上昇となりました。また、前回2位の「川崎・鶴見」は9.41ポイントの大幅下落となった一方で、前四半期で最下位だった「宮崎台・たまプラーザ」が15.68ポイント上昇して4位へ躍進しました。

タイプ別

多くの地域でファミリータイプ賃料の上昇が顕著で、一部地域ではファミリータイプとその他2タイプの格差が大きくなっています。

不動産デベロッパーにとっては東京23区に比べると横浜市・川崎市は用地の仕入れがしやすく、新築マンションの分譲が継続することで賃料を引き上げているものと考えられます。

4.まとめ

いかがでしたか。

住宅ローン減税といった税制面やインフレ、長期的な金融緩和などを背景に全国的にはマンション賃料が長期的な上昇トレンドを描いていますが、その中でも面積帯の広い物件の賃料上昇が全体を牽引していることや、エリアごとの賃貸ニーズの棲み分けや特性が確認されました。

区分マンション投資におけるより良いエリア・物件選定や投資判断に、ぜひ本レポートをお役立てください。

        

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マンション賃料インデックス各指標の定義等について

<インデックス算出条件>

・建物構造:RC(鉄筋コンクリート造)、SRC(鉄骨鉄筋コンクリート造)

・駅から徒歩15分以内

・住戸面積:18㎡以上100㎡未満

        

<物件タイプ>

・シングルタイプ:18㎡以上30㎡未満

・コンパクトタイプ:30㎡以上60㎡未満

・ファミリータイプ:60㎡以上100㎡未満

・総合:18㎡以上100㎡未満

        

<エリアと駅名>

(東京23区)

四谷・麹町:麹町・半蔵門・市ヶ谷・四谷

日本橋・人形町:小伝馬町・茅場町・人形町・日本橋・馬喰横山・浜町・新日本橋・馬喰町・三越 前・水天宮前

月島・勝どき:月島・勝どき

赤坂・六本木:神谷町・六本木・赤坂・乃木坂・六本木一丁目

広尾・麻布:広尾・麻布十番

三田・芝公園:大門・三田・御成門・芝公園・浜松町・田町・赤羽橋

白金・高輪:泉岳寺・高輪台・白金台・白金高輪

新宿:新宿・新宿御苑前・西新宿・新宿三丁目・西武新宿・東新宿・代々木

曙橋・若松河田:四谷三丁目・曙橋・若松河田・牛込柳町

飯田橋・神楽坂:江戸川橋・神楽坂・飯田橋・牛込神楽坂

青山・原宿:原宿・明治神宮前・青山一丁目・外苑前・表参道

渋谷・恵比寿:恵比寿・渋谷・神泉・代官山

代々木:代々木公園・代々木上原・初台・幡ヶ谷・参宮橋・代々木八幡

春日・白山:後楽園・千石・白山・春日

中目黒・自由が丘:中目黒・祐天寺・学芸大学・都立大学・自由が丘

池尻大橋・二子玉川:池尻大橋・三軒茶屋・駒沢大学・桜新町・用賀・二子玉川

東中野・西荻窪:東中野・中野・高円寺・阿佐ヶ谷・荻窪・西荻窪

銀座・新富町:銀座・京橋・八丁堀・築地・東銀座・銀座一丁目・新富町・宝町・築地市場

神保町・秋葉原:神田・秋葉原・淡路町・新御茶ノ水・岩本町・小川町・神保町・九段下

門前仲町・葛西:門前仲町・木場・東陽町・南砂町・西葛西・葛西

池袋:池袋・東池袋・大塚

        

(横浜市・川崎市)

横浜・桜木町:横浜、桜木町

石川町・関内:石川町、元町・中華街、関内、伊勢佐木長者町

川崎・鶴見:鶴見、京急鶴見、川崎、京急川崎、八丁畷、鶴見市場

新丸子-綱島:新丸子、武蔵小杉、元住吉、日吉、綱島

菊名・新横浜:大倉山、菊名、新横浜

二子新地・梶ヶ谷:二子新地、高津、溝の口、梶が谷

宮崎台・たまプラーザ:宮崎台、宮前平、鷺沼、たまプラーザ

あざみ野・青葉台:あざみ野、江田、市が尾、藤が丘、青葉台

中川・仲町台:中川、センター北、センター南、仲町台

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