不動産投資で節税を検討する場合、最新のトレンドをキャッチアップすることが大切です。1年ごとの頻度で税制改正が行われ、特定の物件だけ税制優遇されたり、逆に過去に使えた節税の方法が使えなくなったりなどするためです。
また、知らず知らずのうちに税法に則っていない不適切な不動産運用になっているケースもあります。注意しながら慎重に検討していくことが大切です。
本記事では、2025年の税制改正の内容を基に、最新の不動産投資の節税トレンドをまとめました。おすすめの物件タイプや注意点についても詳しく解説するのでご参考ください。
INVASE事業責任者・渕ノ上(ふちのうえ)
コンドミニアム・アセットマネジメント株式会社 取締役CSO
株式会社FFP 代表取締役
立教大学法学部法学科卒業。在学中より法律系予備校に通い法律を学ぶ。大学卒業後コンサルタントとしてECサイト運営会社を起業すると同時に不動産コンサルタントとしても業務を開始、不動産関連法律資格の講師として活動。
【保有資格】
不動産コンサルティングマスター / 宅地建物取引士 / マンション管理士 / 管理業務主任者 / AFP / 2級ファイナンシャルプランニング技能士 / マンション維持修繕技術者 / マンション建替士
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INVASEメディア運営会社
【運営】株式会社MFS
▼免許登録
貸金業登録番号:東京都知事 第31690号
日本貸金業協会会員:第005928号
【グループ会社】コンドミニアム・アセットマネジメント株式会社
▼免許登録
宅建業免許番号:東京都知事(2)第102833号
2025年「税制改正」最新版!不動産投資と節税
2025年の税制改正では、物価高と金利上昇圧力が続く一方、住宅取得支援と省エネ促進を軸に税制改正が行われ、不動産投資の節税余地が大きく再編されました。
最大のトピックは住宅ローン控除の拡充で、認定長期優良住宅などの高性能住宅を2025年中に取得・入居すれば年末ローン残高の上限が5,000万円(ZEH水準4,500万円、省エネ基準4,000万円)まで引き上げられ、控除率0.7%が適用できます。床面積要件の緩和も継続され、都市部の狭小物件でも恩恵を受けやすいです。
投資家目線で注目すべきは取得・保有コスト関連の措置の延長と廃止です。宅建業者が耐震改修済み中古住宅を販売する際の不動産取得税減額、サービス付き高齢者向け賃貸住宅に対する取得税・固定資産税の軽減は2年間延長されます。一方、優良住宅地造成に伴う土地譲渡益1,500万円控除など土地譲渡特例は2025年3月で廃止され、短期転売益への課税は実質強化されました。
固定資産税では、大規模修繕を行った分譲マンションや耐震補強工事済み物件の減額特例が維持される一方、豪雨・地震関連の一部被災特例は終了するなどメリハリのある設計となりました。投資法人・信託経由での物件取得に対する登録免許税・取得税軽減も2年延長され、SPCを活用した開発型投資のコスト低減は継続されます。
まとめると、2025年は「省エネ・長期保有・社会課題解決」への優遇が厚く、短期譲渡や造成用地へのメリットは縮小していると考えられます。買い増しを検討する際は、「高性能住宅でローン控除を最大化」「土地売却益特例廃止による出口税負担増を織り込む」という2点をポイントとして押さえておくと良いでしょう。
※参照:財務省「令和7年度税制改正の大綱」
節税効果を最大化する不動産投資戦略・おすすめ物件タイプ
タワーマンション投資|減価償却の最大化×実需での売却 or 活用
タワーマンション投資では、物件価格のうち建物部分の割合が大きく、建物設備についても経費化されるため、大きく減価償却費をとれるというメリットがあります。不動産投資の減価償却費は給与所得と損益通算することが可能であるため、会計上の不動産所得のマイナスを作ることで、所得税の圧縮が可能になります。
タワーマンション投資でいくら節税できるのかシミュレーションできる、INVASEの「投資シミュレーター」で計算してみると、年収1,500万円の方であれば約180万円の節税見込み額となっています。給与所得の大きい方ほど減価償却による給与所得の圧縮効果は大きくなることがわかります。
また、タワーマンションは資産も高く、過去の推移としては2005年比較で2.5倍に価格が上昇しており、売却時の値上がり期待もできます。投資用として購入したタワーマンションは実需(事故居住用)として売却することもできるため、より高値での売却も目指せる点が特徴です。
タワーマンション投資は「節税効果」と「資産運用」の2つの観点から、おすすめの物件タイプとなっています。
ただし、2025年以降では上昇する物件と下落する物件の二極化が進むと予想され、購入物件の見極めが重要になります。また、タワーマンション投資では1室の家賃が高額なため、空室時のキャッシュフローが悪化しやすいというデメリットがあります。自身の資金状況から許容できるリスクを勘案し、慎重に検討することが大切です。
インベースではタワーマンション投資を検討されている方向けに、購入から売却までの不動産投資戦略を解説した「資料をプレゼント」しています。興味のある方はこちらもご参考ください。
都心ワンルームマンション投資|長期保有前提・キャピタルロスに注意
タワーマンションのような大型物件への投資にハードルを感じる方にとっては、都心のワンルームマンションが現実的な選択肢となるかもしれません。一般的に、ワンルームマンションは物件価格が2,000万~3,000万円程度と比較的抑えられており、フルローンや低金利ローンなどの融資も活用しやすい点が魅力です。また、コンパクトなため管理の手間も少なく、初めての不動産投資として選ばれることも多くなっています。
一方で注意すべき点もあります。ワンルームマンションは面積や間取りの制約から、自己居住用としての売却(実需売却)が基本的に難しく、購入層が投資家に限られる傾向があります。そのため、将来的な売却益(アップサイド)は限定的であり、マーケットの影響を受けやすい側面があります。
こうした特性を踏まえ、ワンルーム投資ではインフレ局面を的確に捉えることや、家賃収入の安定性、長期的な需要の見通しといった点を冷静に見極めることが重要です。ローン返済のスピードに物件価値が負けてしまうと、キャッシュフローが悪化するリスクもあるため、立地や賃貸需要、築年数などを総合的に判断し、将来的にも資産価値が落ちにくい物件を選ぶようにしましょう。
自己保有の法人への売却|法人側で減価償却
不動産投資で節税を検討する際に大きく課題となるのが「デッドクロス」にどのように対応するのかという観点です。不動産投資におけるデッドクロスとは、ローンの元金返済額が減価償却費を上回る状態を指します。
デッドクロスが発生すると、これまで税務上の恩恵を受けていた部分が薄れ、課税所得が増加し、支払う税金が増える可能性があります。特に、キャッシュフローはプラスでも税金が増えることで手元に残る資金が減少し、再投資や次の戦略に影響が出ることも考えられます。投資計画を立てる際には、このデッドクロスを考慮に入れ、税負担の増加に備えることが重要です。
このようなデッドクロスの対策として、個人名義で設立した資産管理法人に不動産を売却するという方法があります。法人側で再度の減価償却を計上することで累積赤字を確保することが可能で、個人の与信枠を空ける効果もあります。
ただし、この方法には高度なタックスマネジメントが求められるため、不動産に強い税理士・会計士など専門家の協力が不可欠です。物件価格を相場より極端に低く設定すると、税務上の指摘を受けるリスクもあります。自己判断での実行は避けましょう。事例も交えた詳細説明をご希望の方は無料カウンセリングサービスJourney(ジャーニー)をご利用ください。
アパート経営による節税効果は?
木造アパート(築22年以上)などを購入した場合、法定耐用年数の短縮が可能です。たとえば、築30年の木造アパートなら4年間で減価償却でき、初年度から多額の経費計上が可能です。これにより課税所得が大きく圧縮されます。また、修繕費(例:屋根・外壁塗装、給排水交換など)は全額その年度に経費計上できます。アパート経営では、高利回りの家賃収入と早期の減価償却による短期的なリターンを得やすいという点が大きな魅力となっています。
ただし、築年数が経過した中古アパートの経営には、相応のリスクが伴います。新築時に比べて入居率が大きく低下している可能性があり、空室リスクや修繕コストの増加にも注意が必要です。そのため、購入前にはエリアの賃貸需要や建物の管理状況を慎重に見極めることが重要です。
アパート経営のメリットとして挙げられる高い利回りは、こうしたリスクの裏返しでもあります。表面的な収益性や節税効果だけで判断せず、実質的な収支や将来的な修繕負担まで含めて総合的に検討することが大切です。
不動産投資で節税を行う確定申告の手順・流れ
サラリーマンの方で初めて確定申告をする際は難しく面倒に感じられて確定申告をしたくない方もいるかも知れません。確定申告はしないことよりもすることのメリットも大きく、むしろ無申告によって後からペナルティを受ける可能性もあります。
確定申告を行う期間は、翌年の2月16日前後から3月15日前後の1ヶ月です。暦によっては申告書の提出期間が異なるため、事前に国税庁のWebサイトなどで確認するようにしてください。初めての確定申告も、前もって準備を進めていき期限内にできるようにしましょう。
確定申告までに準備すること
確定申告を行う前に、次の3つを済ませておきましょう。
- 開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)の提出
- 青色申告承認申請書の提出
- マイナンバーカードの取得
開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)の提出
開業届とは税務署に個人事業を始めたことを通知する手続きです。開業届を出さずに不動産投資(不動産貸付業)を行うことも可能ですが、なるべくなら提出することをおすすめします。
なぜなら開業届を出しておくと確定申告の際に青色申告ができ、税制上、多くの優遇が受けられるためです。開業届の提出期限は開業してから1ヶ月以内とされていますが、遅れても受理されますし、罰則などもありません。
手続きは納税地の管轄税務署の窓口で、個人事業の開業・廃業等届出書という書類を提出するだけです。
青色申告承認申請書の提出
確定申告には、白色申告と青色申告という2つの方法があります。白色申告は比較的簡単に手続きができますが、特別控除などの優遇はありません。一方の青色申告は最大で65万円の特別控除がうけられるほか、家族への給与を経費計上できたり、赤字を繰り越せたりなどのメリットが得られます。
青色申告承認申請書の提出は事業開始後2ヶ月以内とされているため、開業届と同時に手続きを済ませておくとよいでしょう。
マイナンバーカード
原則として、申告書にはマイナンバーを記載しなくてはなりません。申告にe-Taxを利用する際もマイナンバーカードが必要です。自治体によっても異なりますが、申請から受領までおよそ1ヶ月ほどかかるため、まだ取得してない場合は早めに申請するようにしてください。
確定申告に必要な書類の準備
確定申告に必要な書類の準備は多岐にわたりますので、前もって準備をするようにしたいものです。具体的にはこちらです。
不動産会社から取得するもの
- 不動産売買契約書:該当不動産の売買時
- 賃貸借契約書:入居の都度
- 売渡精算書:該当不動産の売買契約後〜決済前
- 家賃送金明細書:毎月管理会社から受領
最後の家賃送金明細書は毎月管理会社から取得しますがそれ以外は、売買契約時や賃貸付けができたタイミングで取得するものになります。
金融機関から取得するもの
- 返済予定表
不動産投資ローンはほとんどが変動金利での貸し出しになり、半年に一回返済予定表が届きます。確定申告の時期であれば12月末時点のものが最新の返済予定表となりますのでそちらを準備するようにしましょう。
行政から取得するもの
- 固定資産税の納税通知書
毎年1月1日時点の物件所有者の住所宛に、毎年4~6月ごろ市町村から送付されます。なお、不動産を購入した年は売主との間で固定資産税の精算を行います。その場合、固定資産税の精算書も必要となります。
勤務先から取得するもの
源泉徴収票
サラリーマンの方は、毎年源泉徴収票を1月になると前年度分のものを取得できるようになりますので勤務先から取得するようにしましょう。なくした際には総務部などに問い合わせすると再発行してくれます。
その他
- 保険証券
- 管理費明細
- 修繕積立金明細
- 書籍代など
保険証券に関しては、不動産投資を行った初年度に損害保険会社から証券とともに領収書を受け取ることになります。また、毎年11月下旬ころから火災保険料証明書など控除関係の資料が郵送されますので、なくさないように大切に保管してください。管理費や修繕積立金明細に関しては管理会社から取得して下さい。一棟物件であれば修繕積立金を積み立てていないこともあるのでない場合もあります。また、交通費や書籍代など不動産貸付業に関連する出費があれば、領収書を保管するようにしてください。
年末調整に提出する書類と確定申告に必要な書類は、誤って提出しないよう分けておくようにしましょう。
確定申告書の記載
確定申告書の記載にあたって、自分で作成する必要のある確定申告書B、および青色申告決算書はWebから取得することができます。
確定申告書の取得・作成・提出は次のいずれかの方法で行います。
- 確定申告会場で作成・提出する
- 自宅で申告書を作成して郵送する
- e-Tax(電子申請)を利用する
現在では、オンラインで申請ができるe-Taxが推奨されています。また、会場へ行く場合には入場整理券が必要となり、入場できる時間枠が制限されることに注意してください。
確定申告書の記載は、B表の第1表と第2表のそれぞれが必要になります。
白色申告と青色申告の違いとは
白色申告と青色申告とでは、帳簿のつけ方と受けられる特典が異なります。それぞれの違いを簡単にまとめますので参考にしてください。
白色申告
- 記帳方法:単式簿記
- 提出書類:確定申告書B、収支内訳書、各種控除の証明書類(保険料、医療費など)
- 基礎控除:48万円
- 特別控除:なし
青色申告
- 記帳方法:複式簿記(原則)
- 提出書類:確定申告書B、青色申告決算書(貸借対照表、損益計算書)
- 基礎控除:48万円
- 特別控除:最大65万円
青色申告では、特別控除のほかにも次のような特典が受けられます。
- 水道光熱費などの家事関連費の一部を経費計上できる
- 赤字を3年間繰り越せる
- 青色事業専従者給与を全額経費にできるなど
青色申告の方が税制上のメリットは大きい一方で、手続きが複雑に感じられることがあります。どちらを選ぶべきかの基準として、「その収入が事業として行われているかどうか」が重要な判断材料となります。
不動産所得に関して、国税庁では以下のような基準を示しています。
- 貸間・アパート等の場合: 貸与可能な独立した室数が「おおむね10室以上」であること
- 独立家屋の貸付けの場合: 「おおむね5棟以上」であること
(引用:国税庁)
このため、不動産投資が「事業的規模」と判断されるためには、いわゆる「5棟10室基準」が目安になると言われています。ただし、これはあくまで目安であり、最終的な判断はケースバイケースです。詳細については、お住まいの地域の税務署にご確認いただくのが確実です。
なお、ワンルームマンションなどの区分マンション1室のみで不動産投資を行う場合、多くの場合において「事業的規模」には該当しません。そのため、青色申告の特典である「65万円の控除」は受けられませんが、「最大10万円の控除」を受けることは可能です。
※確定申告は税理士に依頼できる
複式簿記が原則の青色申告は、初めての人にとってはハードルが高く感じられるかもしれません。確定申告のみ税理士に依頼するのもよいでしょう。顧問契約を結ばなくてもスポットでの依頼は可能です。
初年度は特に減価償却費の計算など難しい箇所もあるため、税理士に正確な申告書を作成してもらうと安心できます。費用は売上や作業範囲によって異なりますが、1回につき数万円ほどです。事業規模によっては法人化したほうが節税できるケースもあります。
不動産投資の節税でよくあるQ&A
Q. 帳簿や領収書は何年間保存すれば税務調査で問題ない?
A. 所得税法・法人税法ともに原則7年間の保存義務があります(青色申告欠損金を繰り越す場合は10年)。電子帳簿保存法の要件を満たせばPDF等での保存も認められ、検索要件の備えが必須です。
Q. 法人化すると不動産所得の税率はどれくらい下がる?
A. 個人の最高税率45%(住民税含め55%)に対し、資本金1億円以下の法人なら所得800万円以下部分は15%(軽減税率)、超過部分は23.2%で課税されます。役員報酬や退職金を活用した所得分散も可能ですが、社会保険負担や設立コストを含めた総合判断が必要です。
Q. 減価償却を早めてキャッシュフローを改善する方法は?
A. 中古の木造アパート(築22年以上)や鉄骨造(築34年以上)を購入すれば、法定耐用年数の短縮適用で加速度的に減価償却できます。2025年度改正では中古物件の損金算入ルール自体に大きな変更はありませんが、修繕費との区分を明確にすることが重要です。
Q. 不動産取得税の床面積要件は40㎡でも軽減が受けられる?
A. 認定住宅など高性能住宅の場合、床面積40㎡以上50㎡未満でも取得税・住宅ローン控除の双方で軽減措置が受けられます。賃貸投資用の狭小区分マンションでも要件を満たせば節税が可能です。
Q. 2025年の住宅ローン控除は上限いくらまで拡大された?
A. 認定長期優良住宅などの高性能住宅を2025年中に取得・入居すると、年末ローン残高の上限が5,000万円(ZEH水準4,500万円、省エネ基準4,000万円)まで引き上げられ、控除率0.7%が適用できます。床面積要件の緩和(40㎡以上)も継続中です。