2024年3月、日本銀行はマイナス金利政策を解除し、短期金利を0〜0.1%程度へ移行させました。
さらに2024年7月には0.25%程度へ引き上げ、いわゆる利上げ局面に入ったことで、市場ではターミナルレートが強く意識されるようになりました。
加えて2025年1月に0.5%程度、2025年12月に0.75%程度へと段階的に引き上げられており、ターミナルレートの見方も更新され続けています。
ターミナルレートは、今後の金利がどこまで上昇するのかを見極める上で欠かせない概念であり、不動産投資家にとっても重要な指標となります。
なぜなら、住宅ローン金利や不動産投資ローンの金利水準は、日銀の政策金利と密接に連動しているからです。
本記事では、ターミナルレートの基本的な意味から、日銀の政策金利やターミナルレート予想、中立金利との違い、さらには不動産投資への影響まで、わかりやすく網羅的に解説します。
金利動向を正しく理解することで、より戦略的な投資判断が可能になります。
INVASE事業責任者・渕ノ上(ふちのうえ)

コンドミニアム・アセットマネジメント株式会社 取締役CSO
株式会社FFP 代表取締役
立教大学法学部法学科卒業。在学中より法律系予備校に通い法律を学ぶ。大学卒業後コンサルタントとしてECサイト運営会社を起業すると同時に不動産コンサルタントとしても業務を開始、不動産関連法律資格の講師として活動。
【保有資格】
不動産コンサルティングマスター / 宅地建物取引士 / マンション管理士 / 管理業務主任者 / AFP / 2級ファイナンシャルプランニング技能士 / マンション維持修繕技術者 / マンション建替士
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ターミナルレートとは何か
ターミナルレートとは、中央銀行が利上げ局面において最終的に到達すると予想される政策金利の水準を指します。
「ターミナル(terminal)」は「終点」や「最終地点」を意味する英語であり、金融政策における利上げサイクルの終着点がどこになるのかを示す概念です。
中央銀行は景気やインフレ率の状況に応じて政策金利を段階的に引き上げたり引き下げたりしますが、利上げには必ず限界があります。
金利を上げすぎれば景気が過度に冷え込み、逆に経済にマイナスの影響を与えるためです。
そのため、市場参加者や中央銀行自身が「今回の利上げサイクルでは、最終的にどの水準まで金利が上がるのか」を予測し、その到達点をターミナルレートと呼んでいます。
日本では長らくゼロ金利政策やマイナス金利政策が続いていたため、ターミナルレートという概念自体があまり意識されてきませんでした。
しかし、2024年に日銀が金融政策の正常化に舵を切ったことで、日本でも「ターミナルレートはどこになるのか」が大きな関心事となっています。
ターミナルレートと中立金利の違い
ターミナルレートと似た概念に「中立金利」があります。
両者はしばしば混同されますが、厳密には異なる意味を持ちます。
中立金利とは、景気を刺激も抑制もしない、ちょうど中立的な状態を保つ金利水準のことです。
理論的には、中立金利の水準では経済が過熱もせず減速もせず、安定的な成長を続けることができるとされます。
中立金利は経済の潜在成長率や人口動態、生産性などの構造的要因によって決まる長期的な均衡値であり、時代や国によって変動します。
※参照:日本銀行「金融政策の枠組み」
一方、ターミナルレートは特定の利上げサイクルにおける政策金利の到達点であり、必ずしも中立金利と一致するわけではありません。
例えば、インフレが激しい局面では、中央銀行はインフレを抑え込むために中立金利を超えて利上げを進めることがあります。
この場合、ターミナルレートは中立金利よりも高い水準になります。
逆に、景気が弱く慎重な利上げしか行えない場合には、ターミナルレートが中立金利に届かないこともあり得ます。
日本の現状では、日銀がインフレ抑制よりも景気への配慮を重視しているため、ターミナルレートは中立金利よりも低い水準にとどまる可能性が高いと見られています。
整理すると、中立金利は経済理論に基づく長期的な均衡概念であるのに対し、ターミナルレートは現実の金融政策サイクルにおける実務的な到達目標です。
両者は関連していますが、同じものではないという点を理解しておくことが重要です。
日銀の政策金利とターミナルレート
日本銀行の政策金利は、金融機関同士が短期資金を貸し借りする際の金利である無担保コールレート(オーバーナイト物)を誘導目標としています。
日銀はこの政策金利を操作することで、市場全体の金利水準や資金供給量をコントロールし、物価の安定と経済成長を目指しています。
2024年3月、日本銀行は長年続けてきたマイナス金利政策を解除し、政策金利の誘導目標を0~0.1%程度へ引き上げました。
これは約17年ぶりとなる金融政策の正常化への転換点であり、日本の金利環境が大きく変化する節目となりました。
その後、同年7月には政策金利を0.25%程度へ引き上げ、段階的な利上げを進めています。
一方で、2024年12月の金融政策決定会合では追加利上げは見送られ、政策金利は0.25%程度で据え置かれました。
そして2025年1月、さらには12月に日本銀行は政策金利を利上げしており現状は0.75%程度となっております。
これにより、日本の短期金利は明確にプラス圏へと移行し、本格的な利上げサイクルが進行していることが市場で強く意識されるようになりました。
この一連の政策変更を受けて、金融市場では「日銀は最終的にどの水準まで政策金利を引き上げるのか」、すなわちターミナルレートがどこに設定されるのかが大きな注目を集めています。
※参照:日本銀行「金融政策決定会合」
政策金利の引き上げは、銀行の貸出金利や住宅ローン金利、企業の資金調達コストに直接的な影響を与えます。
日銀がどこまで利上げを進めるのか、つまりターミナルレートがどの水準になるのかによって、今後数年間の金利環境が大きく変わってきます。
現在の日銀のスタンスとしては、急激な利上げは避け、経済や物価の動向を慎重に見極めながら段階的に金融政策の正常化を進める方針です。
植田和男日銀総裁は記者会見などで「経済・物価情勢に応じて適切に政策金利を調整していく」としており、明確なターミナルレート水準を示していません。
日銀のターミナルレート予想
市場では日銀のターミナルレートについてさまざまな予想が出ています。
エコノミストや金融機関の見通しを総合すると、現時点では概ね1%から2%程度の範囲に収まるという見方が多数を占めています。
この予想の背景にあるのは、日本経済の潜在成長率の低さと、過度な利上げが景気に与える悪影響への警戒感です。
日本の潜在成長率は1%未満と推計されており、中立金利の水準も歴史的に見て低いと考えられています。
加えて、日本は世界最大級の政府債務を抱えており、金利上昇は国債利払い費の増加を通じて財政負担の拡大につながるという制約もあります。
※参照:内閣府「中長期の経済財政に関する試算」
その後は経済・物価情勢を慎重に見極めながら利上げペースが緩やかになり、最終的には2026年から2027年頃にかけて1%から1.5%程度でターミナルレートに到達するというシナリオが想定されています。
今後の賃金動向やインフレ率の持続性、海外経済の減速リスクなどによって、ターミナルレートの水準は上下に振れる可能性があります。
ターミナルレートの推移と引き上げの影響
ターミナルレートの水準とそこに至るまでの推移は、経済全体に多岐にわたる影響を及ぼします。
金利は経済活動の基盤となる「お金の時間的価値」ないしは「お金の価格」であり、その変動は企業の投資判断、家計の消費行動、金融市場の動向など、あらゆる領域に波及します。
まず企業への影響として、金利上昇は資金調達コストの増加を意味します。設備投資や事業拡大のために借り入れを行う企業にとって、金利が高くなればそのコストは重くのしかかります。
特に借入依存度の高い企業や成長投資を積極的に行う企業にとっては、収益を圧迫する要因となり得ます。
一方で、預金者や債券投資家にとっては、金利上昇は運用利回りの改善につながります。
長年のゼロ金利政策によって預金金利がほとんどつかない状態が続いていましたが、政策金利の引き上げに伴い、銀行預金や国債の利回りも徐々に上昇しています。
これは家計の資産形成にとってはプラスの側面といえます。
株式相場や為替相場への影響
金融市場においては、金利上昇は株式市場にとって逆風となることが一般的です。
企業の借入コストが増加し収益が圧迫されること、また債券利回りの上昇により相対的に株式の魅力が低下することが理由です。
実際、日銀の利上げ発表後には一時的に株価が下落する場面も見られました。
加えて、為替市場への影響も無視できません。日米金利差が縮小すれば円高圧力が強まります。
2024年に入り、日銀が利上げに転じる一方でアメリカの連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを開始したことで、一時1ドル=150円を超えていた円安水準から円高方向への修正が進みました。
為替レートの変動は輸出企業の業績や輸入物価に影響を与え、ひいては国内の物価水準にも影響します。
※参照:財務省「外国為替相場」
財政政策への影響
日本政府は1,000兆円を超える債務残高を抱えており、金利が1%上昇すれば利払い費も大幅に増加します。
これは財政の硬直化を招き、社会保障や公共投資に使える予算を圧迫する可能性があります。
そのため、政府としても急激な金利上昇は避けたいという事情があり、日銀の政策運営にも一定の制約となっています。
このように、ターミナルレートがどの水準に設定され、どのようなペースでそこに到達するかは、経済全体の行方を左右する極めて重要な要素なのです。
ターミナルレートが不動産購入に与える影響
不動産購入を検討している方、あるいはすでに物件を保有している投資家にとって、ターミナルレートの動向は最も注視すべきポイントの一つです。
金利水準は不動産投資の収益性に直結するため、今後の金利見通しを理解しておくことは購入判断において不可欠です。
住宅ローン・不動産投資ローン金利への影響
個人の不動産購入の多くは金融機関からの融資を活用して行われます。
いわゆる住宅ローンや不動産投資ローンの金利は、日銀の政策金利に連動して変動します。
特に変動金利型のローンを利用している場合、政策金利の引き上げは返済額の増加に直結します。
例えば、5000万円を金利1%、期間30年で借り入れた場合の月々返済額は約16万円ですが、金利が2%に上昇すると約18万5000円となり、月2万5000円、年間30万円の負担増となります。
この差は長期的には大きな影響を及ぼします。
現在、日銀のターミナルレート予想が1%から2%程度とされていることを考えると、今後数年間でローン金利もそれに応じて上昇する可能性が高いといえます。
変動金利で借り入れている投資家は、将来的な金利上昇リスクを織り込んだ収支計画を立てておく必要があります。
不動産価格への影響
金利上昇は不動産価格にも影響を与えます。
一般的に、金利が上がると不動産の購入需要が減少し、価格には下落圧力がかかります。
これは、住宅ローンの返済負担が増えることで、購入者が支払える物件価格の上限が下がるためです。
特に投資用不動産においては、利回りで評価されることが多いため、金利上昇によって期待利回りが高まれば、同じ利回りを確保するためには物件価格が下がる必要があります。
例えば、年間家賃収入が500万円の物件を利回り5%で評価すれば1億円ですが、利回り6%が求められる市場環境になれば約8300万円の評価となります。
※参照:国土交通省「不動産価格指数」
ただし、不動産価格は金利だけで決まるわけではありません。
人口動態、立地の優位性、再開発の有無、賃貸需要の強さなど、多くの要因が複合的に影響します。
都心部の好立地物件や、人口流入が続いているエリアの物件は、金利上昇局面でも価格の下支え要因が働く可能性があります。
賃貸需要と家賃水準
金利上昇により住宅購入のハードルが高くなれば、持ち家ではなく賃貸住宅を選ぶ層が増える可能性があります。
これは賃貸物件のオーナーにとってはプラス材料です。
需要が高まれば空室率の低下や家賃の維持・上昇につながります。
また、インフレが進行している局面では、家賃も物価上昇に連動して上がる傾向があります。
実際、2024年は消費者物価指数の上昇とともに、都市部を中心に家賃相場も上昇傾向が見られました。
この動きが続けば、不動産投資の収益性を支える要因となります。
※参照:総務省統計局「消費者物価指数」
新規投資と既存物件の戦略
これから不動産投資を始める方にとって、金利上昇局面は慎重な判断が求められる時期です。
ローン返済負担が増える一方で、物件価格が調整局面に入る可能性もあるため、焦って高値で購入するのは避けるべきです。
金利動向を見極めつつ、本当に収益性の高い物件を厳選する姿勢が重要です。
一方、すでに不動産を保有している投資家は、変動金利から固定金利への借り換えを検討するタイミングかもしれません。
今後さらに金利が上昇すると予想されるなら、現時点の比較的低い水準で固定金利に切り替えることで、将来の返済額を確定させることができます。
また、複数物件を保有している場合は、収益性の低い物件を売却して資産の組み替えを図ることも一つの戦略です。
金利上昇局面では、キャッシュフローの安定した優良物件に集中投資することがリスク管理の観点から望ましいといえます。
※参照:国土交通省「不動産取引価格情報検索」
ターミナルレート引き上げに備えた投資戦略
ターミナルレートの上昇を見据えた場合、不動産投資家が取るべき戦略にはいくつかのポイントがあります。
まず重要なのは、収支シミュレーションを保守的に行うことです。
現在の低金利を前提にした計画ではなく、金利が1%から2%上昇した場合でも十分にキャッシュフローが回るかどうかを検証しておくべきです。
返済比率が高すぎる物件は、金利上昇時に一気に収支が悪化するリスクがあります。
次に、自己資金比率を高めることも有効な対策です。借入額が少なければ、金利上昇の影響も限定的になります。
頭金を多めに用意する、または繰り上げ返済によって元本を減らすことで、金利リスクを軽減できます。
立地選定も重要性を増します。
金利上昇局面では価格が調整する可能性がありますが、好立地で賃貸需要の強いエリアの物件は相対的に価格が下がりにくく、空室リスクも低いため、安定した運用が期待できます。
駅近や都心部、再開発エリアなど、競争力のある立地を選ぶことが、長期的な資産価値の維持につながります。
また、情報収集とタイミングの見極めも欠かせません。
日銀の金融政策決定会合の内容や経済指標、住宅ローン金利の動向などを定期的にチェックし、市場環境の変化を的確に把握することが重要です。
金利が上昇トレンドにあるときは焦って投資せず、逆に物件価格が調整したタイミングで良い物件を取得するという戦略も考えられます。
さらに、税制面での優遇措置も活用すべきです。
不動産投資には減価償却による節税効果や、住宅ローン控除などの制度があります。
これらを適切に活用することで、金利負担の一部を相殺することが可能です。
※参照:国税庁「不動産所得」
まとめ
ターミナルレートとは、中央銀行の利上げサイクルにおいて最終的に到達する政策金利の水準を指します。
日本では2024年に日銀がマイナス金利政策を解除し、本格的な利上げ局面に入ったことで、ターミナルレートがどこになるのかが大きな注目を集めています。
市場では日銀のターミナルレートは1%から2%程度になるとの予想が多く、今後数年かけて段階的に金利が引き上げられると見られています。
政策金利の上昇は、住宅ローン金利や不動産投資ローンの金利に直結するため、不動産購入希望家にとっては収支計画に大きな影響を与える要素です。
金利上昇局面では、ローン返済負担の増加や不動産価格の調整リスクがある一方で、賃貸需要の高まりや家賃上昇といったプラス面も期待できます。
重要なのは、金利動向を正しく理解し、保守的な収支計画を立てること、立地や物件の質にこだわること、そして適切なタイミングで購入判断を行うようにしておきましょう。
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