少ない自己資金でも融資を受けることでレバレッジを掛けて投資をできることは、不動産投資の魅力の一つと言えるでしょう。ただし2018年以降、不動産投資にかかる融資情勢はアパート、マンション一棟物件を中心に厳しくなりつつあります。融資条件によっては不動産投資の収支も大きく影響を受けますし、融資額によっては物件の購入を見送る判断にも繋がります。つまり、融資戦略が不動産投資を制すると言っても過言ではありません。
今回は、不動産投資で賢く融資を受ける方法について解説していきます。
【目次】
1.不動産投資の融資の種類
(1)審査基準
(2)金利相場
(3)返済期間
2.近年の不動産投資に対する融資状況
(1)アパートやマンション一棟の融資が厳しくなった理由
(2)区分マンションは頭金0円でも投資可能
3.不動産投資で有利な条件で融資を受ける方法とは
(1)属性を上げる
(2)頭金を用意する
(3)提携ローンに強い不動産会社で物件を購入する
4.不動産投資の融資を受けられる金融機関
(1)メガバンク
(2)信託銀行
(3)地方銀行
(4)信用金庫・信用組合
(5)ノンバンク
(6)日本政策金融公庫
5.不動産投資ローンを積極的に取り扱う金融機関
(1)不動産投資ローンの金利相場
(2)不動産投資ローンの商品概要
6.アパートローンを積極的に取り扱う金融機関
(1)アパートローンの金利相場
(2)アパートローンの商品概要
7.不動産投資の融資を受けるための必要書類
8.法人でも不動産投資の融資を受けられる?
9.まとめ 不動産投資の融資を有効に活用しよう
不動産投資に利用できる融資は不動産投資ローンとアパートローンと大きく2種類があります。
不動産投資を行う際に、どの物件を選定するかによって利用できる融資の種類は異なります。
住宅ローンとの違い
端的に不動産投資向けの融資と住宅ローンの違いは下記の通りです。
つまりは、他人が住む住宅なのか、自分が住む住宅なのかが大きな違いとなります。
実は、住宅ローンは不動産投資ローンの中に含まれています。不動産投資ローンの用途が住宅ローンよりも広いためです。理論的には自己居住用物件の購入に不動産投資ローンを申し込むことも可能です(逆は不可)。
それでは具体的に不動産投資向け融資について下記項目を確認していきましょう。
不動産投資向けの融資の審査範囲は借り手の与信、物件評価、そして物件の収益性となります。不動産投資向けの融資は事業用として貸し出しされるローンであり、一般に貸し出しリスクが高いと判断されるため、住宅ローンよりも審査が厳しく行われます。
不動産投資向けの融資の金利相場は1.5%台〜2.5%台となります。不動産投資を行う際に目安として認識しておくと良いでしょう。
不動産投資向け融資では最長で45年の貸出期間となります。なお、事業用資金で不動産投資ローンのように最長45年も貸し出しをしてくれることはまずありません。返済期間を長くできるということは、その分毎月の返済額を軽減することができるので、資金繰りに余裕ができます。
借り入れ方のコツとして、できるだけ長い期間の借り入れを行うと良いでしょう。もし期間を短くしたい場合には、繰り上げ返済を行うことでいつでも返済期間を短縮することができます。
なお、返済が始まった後に期間延長することは一般にはできないため注意が必要です。
2020年はコロナウイルスの影響による緊急事態宣言後は、一部の銀行においてリモートワークが導入され、融資申し込み、面談、契約などの手続きに時間がかかっていました。2021年1月現在についても、一都三県や関西、名古屋の地域で再び緊急事態宣言が発令されていますが、2020年4月や5月のような状況には陥っていません。
ただし、2018年以降アパート、一棟物件に対する融資状況は厳しくなってきております。
(出典:金融庁「投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果」)
2018年(平成30年)9月期より融資実行額が半年前と比較しても60%減となっています。
2018年のスルガ問題以前であれば、アパートやマンション一棟物件でもフルローン、諸費用まで借り入れできるオーバーローンの貸し出しが行われていました。しかし、スルガ問題以後は金融機関の貸し出し姿勢や審査に影響が出ています。
(出典:金融庁「投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果」)
2018年9月期以降、融資姿勢が積極的な金融機関は少なくなっています。また、現在は物件の購入に際して頭金を入れることを金融機関は求めています。
(出典:金融庁「投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果」)
現在は、頭金が10〜20%程度必須です。なお、諸費用として7%程度が別途必要となりますので、自己資金は17%〜27%程度は必要となります。
ワンルームマンションなどの区分マンションで投資をする場合、頭金0円でも投資をすることができます。頭金0円で投資できる多くは、不動産会社が保有している物件を購入する場合に適用されます。一方、不動産ポータルサイトに載っている物件は個人が保有している物件を不動産会社が仲介するケースが多く、提携ローンを持っていない仲介会社が多いため、自己資金0円の優遇は受けられません。
目安として物件価格の10〜20%を頭金として求められることが多いため、注意が必要です。
不動産投資を成功に導くためには、融資戦略は極めて重要です。不動産投資で有利な条件で融資を受けるために必要なことはこちらです。
具体的に見ていきます。
属性を上げるとは、例えば年収を400万円から500万円に上げること、勤続年数を伸ばすこと、及び非上場企業から上場企業に転職することなどです。カードローンなどの借り入れをしている場合、返済し終えることも属性アップにつながります。つまり、金融機関から「延滞なく返済してくれそうだな」と思ってもらえるようにすることと言えます。
頭金については、物件によっては0円で投資できることもありますが、物件価格の10〜20%を用意することによって利用できる金融機関の幅が広がり、金利が下がることがあります。
提携ローンですが、主に区分マンションを取り扱う不動産会社が特別条件のローンを取り扱っていることがあります。一般ルートよりも金利が安いケースが多いです。
不動産会社によって、提携ローンの有無は異なるため初回面談時に取引銀行について聞くようにしましょう。金融機関との取引が多い不動産会社はそれだけ融資のアレンジが効きます。
不動産投資の融資では、区分マンション中心に活用できる不動産投資ローンとアパート、マンション一棟物件中心に活用できるアパートローンがあります。金融機関ごとに特色があるため抑えるようにしましょう。
各金融機関をご紹介した後に、不動産投資ローン、アパートローンについて積極的に取り扱う金融機関をご紹介していきます。
メガバンクは日本全国に支店をもつ都市銀行のことを指します。3大メガバンクとして三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、5大メガバンクとしてりそな銀行、埼玉りそな銀行を指します。
全国に支店があるものの、不動産投資の融資ついては慎重で審査は非常に厳しいです。地主一家など代々取引があることや、取引の深い人からの紹介が無いと相談も難しいでしょう。
信託銀行は日本の政令指定都市を中心に支店をもつ銀行のことを指します。三井住友信託銀行、三菱UFJ信託銀行、みずほ信託銀行、野村信託銀行などがあります。
メガバンク同様、全国に支店があるものの不動産投資の融資ついては慎重で審査は非常に厳しいです。地主一家など代々取引があることや、取引の深い人からの紹介が無いと相談も難しいでしょう。
地方銀行は各都道府県に本店がある銀行で、地域経済に大きな影響力を持つ銀行のことを指します。原則は地元の企業や個人にとっての金融機関にはなりますが、一部首都圏に進出している地方銀行があり不動産投資の融資に積極的である傾向にあります。
信用金庫・信用組合は各都道府県に本店がある金融機関で、地方銀行と同様に地域経済に大きな影響力を持つ金融機関を指します。地方銀行との大きな違いは、株式会社でないことから利益第一主義ではなく、地域社会の発展に根ざしているところにあります。
信用金庫や信用組合の融資を利用したい場合は、住んでいる地域や物件の所在地が営業範囲内にあることなどエリアの制限が厳しいです。
ノンバンクは、銀行以外の金融機関のことを指します。預金の受け入れを行わずに、カードローンや融資といった与信業務に特化した金融機関のことを指します。
金利水準は銀行と比較すると高くなる傾向にありますが、エリアの制限が無いことや融資姿勢も銀行と比較して易しいため新規で取り組みをしやすい金融機関になります。
日本政策金融公庫は、政府100%出資で財務省所管の金融機関のことを指します。国民の生活向上を目的として融資を行っているため比較的前向きに融資に取り組んでくれるでしょう。ただし、原則自分で相談をしないといけないことや融資にあたっての事業計画書の作成、頭金を最大でも物件価格の50%は用意しておく必要があります。
借入金利はメガバンク同等に1%台から借り入れすることができますが期間は15年程度と短くなります。
不動産投資ローンを活用できる物件は主には区分マンションや一部の一棟物件が対象となります。日本には800以上の金融機関がありますが、積極的に取り組んでいるところは少ないです。
当社が現時点で把握している金融機関はこちらです。
(50音順)
不動産投資ローンの金利相場は1%前半〜2%後半(平均2%前後)です。
ただし、不動産会社と銀行との取引状況によって金利は異なります。例えば、ある物件を銀行に持ち込んだ際、不動産会社Aから購入する場合には金利が1.9%に対して、不動産会社Bでは1.6%ということがしばしばあります。
少しでも金利を下げて購入するためにも、不動産会社に取引金融機関と最安金利を確認してみて下さい。
頭金0円で投資できることもありますが、多くは不動産会社が保有している物件を購入する場合に適用されます。一方、不動産ポータルサイトに載っている物件は個人が保有している物件を不動産会社が仲介するケースが多く、提携ローンを持っていない仲介会社が多いため、自己資金0円の優遇は受けられません。
目安として物件価格の10〜20%を頭金として求められることが多いため、注意が必要です。また、審査基準は借り手の属性(年収や勤務先及び年収倍率など)と物件評価(含む物件の収益性)の2つが大きな判断基準となります。例えば、サラリーマンであれば年収が500万円以上ないと審査が厳しいのが現状です。また、士族・上場企業(グループ会社含む)・外資系企業勤務は審査に有利に働きますので、該当する方は審査に通りやすいでしょう。
既に不動産投資をされている方は年収倍率(年収の何倍の借り入れがあるか)にも注意が必要です。一般に8倍を超えると融資の承認率が低くなります。借りすぎは要注意です。
不動産投資ローン同様に全国の金融機関で原則取り扱いはありますが、積極性は金融機関によって異なります。
具体的な金融機関はこちらです。
(50音順)
三菱UFJ銀行をはじめとする3メガバンクも融資に取り組んでおり、金利水準も非常に低い(1%以下)ですが、融資を受けられる方は地主をはじめとした高属性に限られます。
西日本エリアから都内に進出している地方銀行は積極的に取り組む傾向にあり、金利水準も低いです。
信用金庫に関しては、もともと取引がある、もしくはその地域の地主であれば融資を行うケースもありますが、これらに該当しない場合は貸し出しは難しいようです。
アパートローンの金利相場は1%前半〜4%前後(平均2.7%前後)です。
不動産投資ローンに比べると金利が高い傾向ですが、属性、取引深耕度合い、物件によって金利は大きく異なります。
地主で昔から金融機関と取引を重ねている場合には、35年融資で金利0.5%といった住宅ローンとほとんど変わらない金利で貸し出されるケースもあります。ただ、これは極めてレアなケースです。初めての物件購入であれば、2%台後半の融資を受けられれば御の字と言えるでしょう。
なお、アパートローンで低金利を実現するためには、不動産投資家としての実績を積み、”きれいな”バランスシート(債務超過でないBS)にすることで金融機関からの評価が高まり、低金利でローンを借りられるようになります。
アパートローンの商品概要は下記の通りです。
スルガ問題以前であれば、一棟物件でもフルローン、諸費用まで借り入れできるオーバーローンの貸し出しが行われていましたが、現在は頭金が10〜20%は必須です。なお、諸費用として7%程度が別途必要となりますので、自己資金は17%〜27%程度は必要となります。
つまり、5,000万円の物件であれば最低でも850万円の資金が必要です。
その上でサラリーマン投資家であれば年収は理想的には700万円、最低でも500万円は必要になるでしょう。
不動産投資の融資を受けるためには金融機関に必要書類を提出しなければいけません。具体的な必要書類はこちらです。
ご自身に関する書面
預金に関しては改ざんを防ぐために一度は必ず原本確認が必要になります。印鑑証明、住民票、納税証明書は本審査までに必要になる事が多いです。
事業計画書に関しては、区分マンション、一部一棟物件においては不動産会社が作成してくれることがあります。ただし、ご自身でもこの物件を購入することによる事業計画を作成できる方が金融機関としては審査上有利に働くと言えるでしょう。
物件に関する書面
多くは取引する不動産会社が保有しており、審査予定の金融機関への提出をサポートしてくれるところもあります。また、検査証など物件が古い場合は無いこともあるためその場合は金融機関に伝えましょう。
不動産投資を個人で行う場合には、不動産会社と銀行が提携している提携ローンで不動産投資ローンを借りるケースが多いです。個人で不動産投資を拡大してきた人は資産管理法人を立てるなど法人で不動産投資を行っている人もいることでしょう。
法人で不動産投資の融資を受ける場合は、提携ローンではなくアパートローンや事業性資金になります。個人での申込以上に事業性の側面が強くなり審査は厳しくなるでしょう。
ただし、法人で3期以上不動産投資の実績があり、通期で黒字経営ができており、バランスシートも債務超過でない状態であれば個人で借り入れするよりも良い条件になることもあります。
今回は、不動産投資で賢く融資を受ける方法について解説しました。
不動産投資向けの融資は区分マンションか一棟物件かによって頭金の必要性が変わります。
ワンルーム含め区分マンション投資を検討する際には、不動産会社がどのような金融機関と取引しているかを確認することで、相場よりも高い金利で借りることを回避できます。必ず個別面談の際に確認しましょう。
アパートローンについては、原則自己資金が物件価格の17%以上は必要となるため、これから一棟物件で投資を行う方は、その金額を貯める必要があります。
もしできるだけ少ない自己資金で不動産投資を行いたい場合は、区分マンションから始めてみると良いでしょう。
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