夫婦で暮らす世帯の老後資金はいくら必要なのでしょうか?まずはリタイア後の収入・支出の目安をチェックしましょう。老後資金を確保するには、貯金はもちろん資産運用も活用しましょう。低金利が続く中でも資金を増やしやすい方法を紹介します。

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【目次】

老後資金が注目される理由

夫婦の老後資金はいくら必要?

いくら必要かは世帯によって異なる

老後の収入を把握

資産運用で老後資金を確保

おすすめの資産運用方法

老後の備えには早めの資産運用を

老後資金が注目される理由

老後は誰にでも訪れます。そのため老後資金をどのように確保するか、頭を悩ませている人は多いでしょう。

頼れるはずの年金制度に不安に感じたり、長寿がリスクになり素直に喜べなかったりもしているかもしれません。老後2,000万円問題が話題になる点からも、多くの人が注目している話題と分かります。

年金制度への不安

『生活保障に関する調査』において、老後生活に不安感があると回答した人は『85.7%』でした。8割を超える人が不安を感じる背景には、年金制度がうまく機能しなくなってきている事実があります。

日本の公的年金は、現役世代が年金生活者を支える仕組みです。年金保険料として現役世代が支払っている掛け金が、年金生活者へ支給されています。

子どもがどんどん増えていた時代には、仕組みがうまく機能していました。しかし少子高齢化が進み現役世代が減少している今、年金だけで老後の暮らしを支えるのは難しくなってきています。

参考:平成28年度 生活保障に関する調査《速報版》 P.33|公益財団法人 生命保険文化センター

人生100年時代の長寿リスク

お祝い事とされている長寿も、老後資金を考える上ではリスクに分類されます。長生きすればするほど多くの資金が必要だからです。

公的年金の制度が始まった当時、平均寿命は60歳前後でした。現在の平均寿命は、男性 81.64歳・女性 87.74歳です。制度が始まった当初想定していたより、長生きする人が増えています。

さらに現在65歳以上の女性の場合、2人に1人は90歳まで長生きし、16人に1人は100歳まで生きる時代です。このような中、年金制度を継続するために、受給開始年齢の段階的な引き上げが決まりました。

今後も受給要件や受給額は厳しくなると予想されます。

参考:令和2年簡易生命表の概況 P.2|厚生労働省

老後2,000万円問題が話題に

金融庁の『金融審議会 市場ワーキング・グループ』が提出した報告書によると、夫婦2人暮らしの生活費は、老後30年間で2,000万円不足するとされます。この報告書は『老後2,000万円問題』として話題になりました。

この試算で前提とされているのは、夫65歳・妻60歳の夫婦です。年金受給を開始する時点で、2人とも無職であり、その後30年間健在とします。

この場合に生活費にかかる金額は月26万3,718円(うち消費支出23万5,477円)、収入は20万9,198円が平均との調査結果が出ています。収入と支出の差額が月に約5万5,000円のため、30年間でおよそ2,000万円不足する計算です。

参考:金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」P.16,21|金融庁

参考:家計調査 / 家計収支編 二人以上の世帯 年報|総務省

夫婦の老後資金はいくら必要?

老後2,000万円問題は、総務省が発表している2017年の『家計調査』をもとに計算された結果です。収入と支出は調査した年によっても異なるでしょう。目安として高齢夫婦無職世帯の平均支出やその内訳をチェックします。

高齢夫婦無職世帯の平均支出額

総務省が実施した2019年の調査で確認すると、高齢夫婦無職世帯の平均消費支出額は『23万9,947円』です。平均消費支出額とは、税金や保険料を差し引いた支出を指します。

税金や保険料の合計額である非消費支出『3万982円』をプラスすると、支出全体で『27万929円』です。さらに2020年の調査では、平均消費支出額は『22万7,347円』、非消費支出も合わせると『25万9,304円』です。

社会情勢の影響によって、外食費や宿泊料などが減少し、消費支出が縮小している傾向が見られます。

参考:家計調査年報(家計収支編)2019年(令和元年) 家計の概要「II 総世帯及び単身世帯の家計収支」 P.17|総務省

生活費の内訳

さらに高齢夫婦無職世帯の生活費の内訳を見ていきましょう。2019年調査の平均消費支出『23万9,947円』の内訳は下記の通りです。費目ごとに支出を見ていくと、自分の家計と平均との差が見えてくるでしょう。

食料:6万6,458円

住居:1万3,625円

光熱・水道:1万9,983円

家具・家事用品:1万100円

被服および履物:6,065円

保健医療:1万5,759円

交通・通信:2万8,328円

教育:20円

教養娯楽:2万4,804円

その他の消費支出(諸雑費・交際費・仕送り金):5万4,806円

参考:家計調査年報(家計収支編)2019年(令和元年) 家計の概要「II 総世帯及び単身世帯の家計収支」 P.19|総務省

いくら必要かは世帯によって異なる

高齢夫婦無職世帯の平均的な支出とその内訳を確認しました。ただしこれはあくまでも平均であり、全ての世帯に当てはまるものではありません。状況によっては支出がより多くなるケースもあります。

持ち家か賃貸かによる支出の差

平均支出の内訳を見ると、住居費が1万3,625円です。この金額から、ほとんどの世帯が持ち家で住宅ローンを完済していると推測できます。

持ち家であれば、年金の不足分を不動産を担保に借り入れるリバースモーゲージでカバーしたり、売却して資金を作ったりすることも可能です。資産として有効活用もできます。

賃貸住宅に住んでいる場合には、平均と比較して支出が増えるでしょう。その分の老後資金をプラスする必要があります。ただし住み替えが比較的簡単にできる点はメリットです。

収入や家族の状況に合わせて住み替えていけば、老後資金を貯めやすいかもしれません。

ゆとりのある生活を送りたい場合

リタイア後は趣味や旅行を楽しみたいと考えているなら、その分の資金も必要です。先に紹介した平均消費支出は、生活保険文化センターの実施する調査で分かった最低日常生活費『22万1,000円』に近い金額です。

ゆとりある暮らしを送るには、最低日常生活費以外に平均で『月14万円』かかるといわれています。老後の生活を充実させるために、どのような暮らしをしたいでしょうか?

具体的に考えることで、どのくらいの資金が必要か分かるはずです。

参考:令和元年度 生活保障に関する調査《速報版》 P.39,40|公益財団法人 生命保険文化センター

老後の収入を把握

老後資金をいくら用意すればよいか知るには、老後の収入を正しく把握する必要があります。そのためには年金支給額を確認しなければいけません。

公的年金は加入期間や支払い保険料によって支給額が異なるため、いくら受け取れるかは人それぞれ異なります。繰上げや繰下げによる支給額の違いや、年金にかかる税金についても確認しましょう。

年金支給額を確認

将来的に年金をいくら受け取れるのかを知るには『ねんきんネット』を利用しましょう。パソコンやスマートフォンから自分の年金記録を確認できます。

また『ねんきんダイヤル』や『電子申請』による申し込みでも年金の見込額をチェック可能です。ほかに誕生月に日本年金機構から送付される『ねんきん定期便』でも、加入実績に応じた年金額が分かります。

ねんきんネット|日本年金機構

年金の繰上げ・繰下げによる影響

年金の支給額は『繰上げ』や『繰下げ』によっても変わります。65歳から支給が始まる年金は、繰上げ請求すると60歳から受け取り可能です。ただし1カ月繰上げるごとに0.5%減額され、その金額は生涯変わりません。

60歳になった月から受給する場合『0.5%×60カ月=30%』の減額です。60~65歳の間に収入が少なくなる予定であれば、繰上げ受給で早めに受け取り始めるとよいでしょう。

一方繰下げ受給をすると、1カ月につき0.7%増額されます。最大で70歳まで繰下げでき『0.7%×60カ月=42%』増額された年金を受給可能です。

支給開始は遅れますが、増額した金額を生涯受け取れるため、長寿リスクへ対策しやすいでしょう。

所得税・住民税がかかるので注意

年金は『雑所得』として扱われ『所得税』と『住民税』が課税されます。支給金額を全額受け取れるわけではないという点に注意しましょう。老齢年金は、課税対象となる金額が下記の通り年齢ごとに異なるのが特徴です。

65歳未満:108万円以上

65歳以上:158万円以上

所得税は『(年金額-社会保険料控除等の各種控除)×5.105%』で計算され、年金額から源泉徴収されます。納め過ぎの所得税の還付を受けるには確定申告しましょう。

住民税も年金からじかに差し引かれる『特別徴収』の対象です。前年に受け取った公的年金の所得から税額が計算され、徴収されます。

資産運用で老後資金を確保

老後資金作りのために貯金をしている人もいるでしょう。しかし超低金利が続く状況下では、貯金をしているだけではなかなか資産を増やせません。株式投資・投資信託・不動産投資など、資産運用も計画的に取り入れるとよいでしょう。

超低金利時代に貯金は不利

貯金も資産運用の一つです。しかし超低金利が続く中、貯金のみで資産運用をするのは不利といえます。大手銀行の定期預金の利率は年利0.002%程度です。

この金利で定期預金に500万円を預け入れ10年間運用したとしても、利息は1,000円しか付きません。仮に同じ金額を年利1%で10年間運用できたとすれば、5万円の利息を受け取れます。年利3%なら15万円です。

株式や投資信託による運用はリスクもあるため、必ずしも計算通りの利回りを実現できるとは限りません。しかし貯金だけで資金を作るよりは、運用による方が利益を得やすいでしょう。

資産運用は早く始めるほど有利

資産運用を始めるなら、できるだけ早いタイミングで始めましょう。『複利効果』を生かして、より少ない元本で目標金額を達成しやすくなります。

複利効果とは、利息にも利息が付くということです。1万円を年利1%で運用すると、初年度は1万100円になります。翌年もそのまま運用すると、1万100円に1%の利息が付くため、1万201円になります。

この仕組みを利用し早くから資産運用を始めると、低リスクで大きな資産を築けるでしょう。毎月同じ金額を積み立てたとしても、20代で資産運用を始めた人の方が、40代で始めた人よりも、低利回りで目標を達成できます。

リスクとリターンのバランスを考え判断

本格的に資産運用を始めるなら『リスク』と『リターン』を考慮しましょう。リスクは値動きの触れ幅のことを指し、リターンは運用で得られる収益を指します。

リスクが高いほどリターンも得られますが、その分大きな損失が出る可能性もあります。そのためどのくらいのリスクなら許容できるかを考え、運用する金融商品を選ぶのがポイントです。

20代や30代という若い年代であれば、損失が出てもカバーできる期間があります。そのため多少大きめのリスクを取ってハイリターンを狙ってもよいでしょう。

40代・50代は定年が間近にせまりつつあり、住宅ローンや子どもの学費も負担しているためリスク許容度は低めです。元本をできるだけ減らさないよう、堅実な資産運用が向いています。

おすすめの資産運用方法

資産運用にはさまざまな方法があり特徴が異なります。中には税制面で優遇されている運用方法もあるため、節税にもつながるでしょう。資産運用の初心者でも取り組みやすい方法や、安定収入につながる方法を紹介します。

iDeCo

任意で加入できる私的年金制度『iDeCo』は、自分で運用方法を選んで掛け金を運用できる仕組みです。掛け金と運用益の合計額を年金として60歳以降に受け取れます。

iDeCoは税制優遇が充実している点が特徴です。掛け金は全額所得控除を受けられ、運用益や給付を受けるときにも優遇措置を受けられます。

公的年金の不足部分を備うための制度です。

iDeCo公式サイト|iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)

NISA、つみたてNISA

『NISA』は定められた金額の範囲内であれば、運用益が非課税になる制度です。通常であれば運用益には約20%の税金がかかりますが、NISAの利用で税金の負担を抑えられます。

NISAは下記の3種類から選び利用しましょう。

  • 一般NISA:非課税枠は年120万円、非課税期間は最長5年間、選べる金融商品が豊富
  • つみたてNISA:非課税枠は年40万円、非課税期間は最長20年間、金融庁が選定した投資信託で資産運用できる
  • ジュニアNISA:非課税枠は年80万円、非課税期間は最長5年間、日本在住の0~19歳が対象

2024年からは新NISA制度が始まります。一般NISAは安定投資を目指す1階部分と従来の2階部分からなる構成へ変わり、つみたてNISAは期限が延長、ジュニアNISAは終了です。

NISA特設ウェブサイト |金融庁

不動産投資

所有する不動産を貸して収益を上げるのが『不動産投資』です。賃貸物件のオーナーとして家賃収入を継続的に得る方法のほか、購入した物件が値上がりしたタイミングで売却することで利益を得る方法もあります。

家賃収入を得る目的で実施する不動産投資であれば、空室リスクへ対策しながら運用することで、安定収入につなげやすいでしょう。老後の生活費を補填するために、賃貸用物件を所有する人が増えています。

アパートやマンションを一棟丸ごと購入しようとするとハードルが高いかもしれません。比較的低価格で始めやすいのは、ワンルームマンションを区分所有して貸し出す方法です。

老後の備えには早めの資産運用を

老後資金として夫婦でいくら必要か分からないなら、まずは年金支給額を確認しましょう。その上で支出にいくら必要か計算し、差額を出します。その赤字分が用意しておかなければいけない資金です。

貯金でも資金作りはできますが、低金利の状況下では積極的な資産運用も大切でしょう。できるだけ早めに運用を始めれば、複利効果を利用し、少ない元本を低リスクで運用しても目標金額を達成しやすいはずです。

税制優遇を受けられるiDeCoやNISAのほか、安定収入につながりやすい不動産投資による運用も役立ちます。

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