不動産投資を行ううえで目指す方向性は人それぞれですが、ある程度の規模になれば法人化したほうが良いケースもあります。個人事業と法人とではどのような違いがあるのか、あらかじめ知っておいて損はありません。そこで今回は、不動産投資における個人と法人の違いについて、また個人事業から法人に切り替える方法について解説します。

【見出し】

1.個人事業と法人の違い

(1)所得税と法人税

(2)住民税と法人住民税

(3)不動産投資ローン

2.法人化のタイミング

3.法人化するメリット

(1)節税効果が高い

(2)経費計上できる項目が増える

(3)損失の繰越控除の期間が長い

4.法人化するデメリット

(1)設立時に手間や費用がかかる

(2)運営コストがかかる

(3)損失の繰越控除の期間が長い

(4)物件の所有者を個人から法人にするとき税金が発生する

5.サラリーマン投資家が法人化するメリット

6.サラリーマン投資家が法人化するときの注意点

(1)物件によって法人化しないほうが良いことも

7.法人化の流れ

8.まとめ 法人化のメリットとデメリットを把握しておこう

1.個人事業と法人の違い

投資家本人が株式会社や合同会社を設立し、物件の購入や維持管理などを会社名義で行うことを不動産投資の法人化といいます。実際の業務は個人事業主とほとんど変わりませんが、納める税金の種類や税率、不動産投資ローンの条件が異なります。それぞれの違いを見てみましょう。

 

(1)所得税と法人税

所得に応じて納めていた所得税は、法人になると法人税に代わります。個人の不動産所得は総合課税対象のため、給与などと合算し、金額に応じて5~40%の所得税が課されます。一方の法人税は、累進課税ではなく2段階の税率構造となっており代表的なものは法人税、法人住民税、法人事業税となります。税率は公益法人や社団法人など法人区分によって異なりますが、株式会社(資本金1億円以下)の税率は以下のように定められています。

・ 年800万円以下の部分:15%

・ 年800万円超の部分:23.20%

詳しい税率などに関しては国税庁ページをご覧ください。

参考:所得税の税率|国税庁

参考:法人税の税率|国税庁

法人地方税については、東京都主税局の参照先として記載しますのでご参考下さい。

参考:東京都主税局 法人事業税・法人都民税

(2)住民税と法人住民税

住民税は居住地である自治体に納める税金です。自治体によって若干の違いはありますが、概ね次のような税率となっています。

・ 所得割:課税所得のおよそ10%

・ 均等割(標準税率):都道府県民税1,500円+市町村民税3,500円

 

法人も個人と同じく事務所のある自治体に住民税を納めます。

・ 法人税割(法人税額を基準として課税):都道府県民税1.0%+市町村民税6.0%

・ 均等割:資本金や従業員数に応じて課税

このうち、均等割は事業が赤字であっても納めなくてはなりません。ちなみに東京都の場合、資本金1,000万円以下・従業員50人以下の法人の均等割額は7万円となっています。

 

(3)不動産投資ローン

法人への不動産投資ローンは個人よりも金利が高く、借入期間は短くなるのが一般的です。特に法人化した直後は実績がないため、事業計画や与信などの審査は厳しくなる傾向にあります。

参考:不動産投資ローンと住宅ローンの違いは何?上手に不動産投資ローンを借り換えする方法もご紹介

2.法人化のタイミング

法人化するタイミングは課税所得で判断することが多いようです。目安は課税所得900万円です。所得税と法人税の税率は課税所得に応じて次のように定められており、詳しくは国税庁のHPをご覧ください。(2021年2月時点)

・所得税

695万円を超え900万円以下:23%

900万円を超え1,800万円以下:33%

参考:国税庁 所得税の税率

・法人税

800万円超の部分:23.20%

上記のとおり、課税所得が900万円を超えた場合には、法人税のほうが税率が低くなります。給与などの所得を含め課税所得が900万円を超えるようであれば、法人化を検討してみることをおすすめします。

参考:国税庁 法人税の税率

3.法人化するメリット

不動産投資を法人化するメリットの代表的なものに、次の3点があげられます。

・ 節税効果が高い

・ 経費計上できる項目が増える

・ 損失の繰越控除の期間が長い

それぞれ解説します。

 

(1)節税効果が高い

前述の法人税のほか、売却益に対する税率も法人のほうが有利になるケースがあります。売却益にかかる譲渡所得税は、個人の場合は次のように物件の所有期間に応じて税率が異なります。

・短期所得(5年以内):約39%

・長期所得(5年超):約20%

短期譲渡所得と長期譲渡所得に関して、国税庁のHPをご覧ください。

短期譲渡所得に関して:国税庁 短期譲渡所得の税額の計算

長期譲渡所得に関して:国税庁 長期譲渡所得の税額の計算

法人の場合は所有期間に関係なく、約30%の実効税率が適用されます。家賃収入よりも売却益を優先する場合には、法人のほうがお得かもしれません。詳しくは国税庁のHPをご覧ください。

参考:国税庁 法人税の税率

 

(2)経費計上できる項目が増える

個人では計上できなかった、あるいは制限があった費用も、法人化すれば経費計上できるようになります。たとえば、経費として認められる生命保険料は、個人の場合は12万円が上限です。一方の法人には上限がありません。保険料のほか、条件がありますが家族を役員にした場合の役員報酬や退職金など、経費にできる範囲が広がります。

 

(3)損失の繰越控除の期間が長い

赤字を翌年以降に繰り越して計上できるのは個人(青色申告に限る)も同じですが、その期間が異なります。個人は3年間ですが、法人は10年間の繰り越しが可能です。物件を購入した年は赤字になることが多いですが、翌年以降の収入から赤字部分を差し引けるので、所得税(法人税)を抑えられます。

 

4.法人化するデメリット

法人化するデメリットとして、次の4点に注意してください。

・ 設立時に手間や費用がかかる

・ 運営コストがかかる

・ 各種税金がかかる

・ 物件の所有者を個人から法人にするとき税金が発生する

それぞれ解説します。

 

(1)設立時に手間や費用がかかる

個人の場合には税務署に開業届を提出するだけで、特別な費用はかかりません。一方、法人の設立には資本金や登録免許税、法定費用、司法書士への報酬などの費用がかかります。株式会社は25~30万円程度、合同会社は10~15万円程度が必要です。

 

(2)運営コストがかかる

法人になると税務処理が煩雑になるため、多くは税理士に依頼することになりますが、その際は顧問契約料が発生します。事業が赤字であっても納めなくてはならない法人住民税の均等割額も、運営に必要なコストのひとつです。事業規模が大きくなり従業員を雇うようになれば、給与の支払いや社会保険料の加入義務が発生します。

 

(3)各種税金がかかる

前述の法人税・法人住民税などの各種税金がかかります。法人事業税は、法人が事業を行うために利用する各種行政サービスの必要経費を分担するという考えに基づいて課税される地方税です。税率判定は都道府県ごとのルールに従って行われ、資本金や年間所得などによって軽減税率・標準税率・超過税率のいずれかが適用されます。

 

(4)物件の所有者を個人から法人にするとき税金が発生する

個人所有の物件を法人に移す場合には、売買契約時と同じように不動産取得税や登録免許税が発生します。また、所有権移転登記費用も必要です。

 

5.サラリーマン投資家が法人化するメリット

現在サラリーマンの方が、将来不動産投資家として独立を検討する際に法人化をしておくと融資の面でも利点を得られる可能性があります。不動産投資で規模を拡大するためには融資戦略が極めて重要です。

個人の場合には、不動産会社と銀行が提携している提携ローンで不動産投資ローンを借りるケースが多いです。

一方で法人の場合は、提携ローンではなくアパートローンもしくは事業性資金になります。アパートローンについては、個人で借りる不動産投資ローンに似ており、申込者の属性情報や購入予定の物件価格に対する融資の割合、融資利率などが予め設定されています。

事業性資金に関しては、法人によって条件をオーダーメイドで設定する融資になります。単に個人で不動産投資ローンを借りるよりも、アパートローン、事業性資金になるに従い申込ハードルは上がりますが、その分条件も良いものになるケースがあり、事業がうまくいっているのであれば借り入れできる上限額も個人以上に大きくできる期待もあります。

6.サラリーマン投資家が法人化するときの注意点

サラリーマン投資家が法人化を検討する場合は、まず勤め先の就業規則を確認するようにしてください。近年は副業を認める会社が増えていますが、法人設立となると後で問題になる可能性があります。家族を事業主とした株式会社を設立し、自分は株主として出資するなどの方法もとれます。会社への確認や相談が難しい場合は、不動産投資の法人化に詳しい税理士に相談してみましょう。

 

(1)物件によって法人化しないほうが良いことも

課税所得が900万円以上だからといって、誰でも法人化のメリットがあるわけではないので注意が必要です。個人でも物件の総額に占める建物割合が高い場合には、経費として計上できる減価償却費が大きくなります。また、個人所得税の場合に認められている「青色申告特別控除65万円」の存在も大きいです。法人税には同様の控除はありません。

※青色申告特別控除は、経営する賃貸住宅が「5棟10室以上」の事業的規模の場合に65万円、それに満たない場合は10万円。

このように「減価償却費」と「青色申告特別控除」によって、個人の不動産所得が大幅に圧縮され、個人の方が税金が少なくなるケースもあります。

法人化が有利になるかどうかは、「所得水準」に加えて、「購入する物件」によって左右されますので、気になる方は物件ごとに個人と法人の手取り額を正確に試算して、比較してみると良いでしょう。

  

7.法人化の流れ

法人化の手続きについて簡単に紹介します。どのような流れで手続きを行うのか把握しておいてください。

1. 会社設立の基本項目を決定:商号、本店所在地、資本金、事業内容など

2. 印鑑作成:代表社員、銀行員、角印

3. 定款作成・認証:書面あるいは電子(PDF形式)で作成し、公証人の認証を受ける

4. 資本金の払い込み:代表者の個人口座に払い込み、振込証明書を作成する

5. 登記申請:本店所在地を管轄する法務局で行う

6. 各種届出:法人口座の開設、税務署への届け出など

 

8.まとめ 法人化のメリットとデメリットを把握しておこう

今回は、不動産投資における個人と法人の違いについて、また個人事業から法人に切り替える方法について解説しました。

法人化は不動産所得の節税に効果がありますが、会社設立には手間や費用がかかります。個人事業のときには課されなかった税金も発生するため、法人化のタイミングは慎重に検討することが大切です。法人化のメリットとデメリットをよく考え、コストや税率を自分の所得にあてはめてシミュレーションしてみましょう。メリットのほうが大きいとわかったら、法人化のタイミングといえます。将来のことも考えて、無理のないプランで法人化を進めてください。

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