不動産を購入する際、今までの常識では物件価格の10〜20%の頭金を用意して購入することが一般的でした。近年では頭金がなく物件金額まで借り入れして不動産を購入できることもあり、購入時にどのように借り入れするか悩む方もいらっしゃることでしょう。

今回は、フルローンのメリット・デメリットと融資審査の基準について解説します。

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【目次】

フルローンとは

フルローンのメリット

フルローンのデメリット

融資審査が厳しくなった背景

フルローンの審査基準

フルローンがおすすめできる人

フルローンでの失敗例

フルローンの失敗対策

借入額を決めるときは返済のゆとりを考えることが大切

フルローンとは

フルローンとは、物件金額の全額を金融機関からの融資でまかなうことをいいます。フルローンはマイホーム購入はもちろん不動産投資にも利用できますが、マイホーム購入に比べると近年は不動産投資向けの融資審査が厳しくなり、フルローンを組むことが難しくなっているようです。

フルローンとオーバーローンの違い

フルローンに似たワードとしてオーバーローンというものがあります。フルローンとオーバーローンは、いずれも頭金を入れずに融資を利用する方法です。

フルローンとオーバーローンとの違いは、融資を受ける範囲にあります。物件金額の全額を借り入れるフルローンに対し、オーバーローンでは契約時にかかる諸費用も上乗せして借り入れることができます。

たとえば、3,000万円の物件購入に200万円の諸費用がかかるとして、3,000万円のローンを組んだ場合はフルローン、諸費用も加えて3,200万円のローンを組むのがオーバーローンです。

不動産の購入時には、不動産会社に支払う仲介手数料、金融機関に支払うローン手数料、登記に必要な登録免許税などの支払いが必要になります。目安は新築なら物件価格の3~7%、中古物件は6~10%となりますが、オーバーローンを受けられない場合は現金で準備しなくてはなりません。

不動産投資でオーバーローンは難しい

マイホーム購入の場合は、2021年12月現在でもフルローンのみならず諸費用も加えてオーバーローンでの借り入れができます。

一方で、不動産投資の場合は2018年のするが 問題を契機に融資基準が厳しくなった背景からオーバーローンでの借り入れは特に一棟物件では非常に難しくなっています。

手元に現金がない場合などオーバーローンが利用できると助かります。しかしながら、融資審査が厳しくなっている昨今、物件価格以上のオーバーローンを認めてくれる金融機関はほとんどありません。

ちなみに、物件の売却代金でローンが完済できず債務が残ることもオーバーローンと呼ばれます。借入時のオーバーローンも売却時のオーバーローンも、多額の借入がある状態に変わりありません。オーバーローンという言葉には注意したほうがよいでしょう。

フルローンのメリット

フルローンを利用するメリットには、主に次の2点があげられます。

・自己資金を手元に残せる

・レバレッジ効果を最大に活用できる

どのようなところがメリットになるのか、具体的に解説します。

自己資金を手元に残せる

金融機関に融資を申し込む際、物件価格の2割ほどの頭金を求められることがあります。頭金には借入額を少なくして返済負担を軽減する効果がありますが、頭金不要のフルローンを利用した場合、頭金にするはずの自己資金を手元に残せます。手持ち資金に余裕があれば、何かあったときにも慌てずに対応できるでしょう。

融資を受けた翌月からは早速ローンの返済が始まりますが、すぐに家賃収入が発生するわけではありません。リノベーションをしたり入居者を募集したりする間も返済は待ってくれないので、家賃が得られない間の返済原資には自己資金を充てることになります。ほかにも不動産投資はさまざまなリスクに備える必要があり、ある程度の資金が手元にあったほうが安心です。

レバレッジ効果を最大に活用できる

レバレッジとはてこの原理を意味する言葉で、不動産投資では少ない資金で大きな資産を得ることをいいます。そもそも高額な不動産を現金一括で購入できる人はそう多くはありません。ローンを利用すれば自己資金の何倍もの価格がつく物件を購入し、自分の資産にすることができるのです。

頭金を入れないフルローンでは、物件価格に対する自己資金の投入額は0円になります。まさにレバレッジ効果を最大限に活用できる方法といっても過言ではないでしょう。

フルローンのデメリット

反対に、フルローンのデメリットとしては次の3点が考えられます。

・返済負担が大きくなりがち

・金利上昇時のダメージが大きい

・金融機関の融資審査が厳しい

その理由について具体的に解説していきます。

返済負担が大きくなりがち

フルローンでは頭金を入れないぶん借入額が多額になり、当然ながら毎月の返済額も大きくなります。不動産投資ではローンの返済は家賃収入でまかなうのが基本ですが、毎月確実に家賃が入ってくる保証はありません。空室や家賃滞納などで家賃収入がなくても返済を続けなくてはならず、徐々に自己資金を圧迫していきます。

なお、住宅設備の故障など修繕が必要になった場合、その費用はオーナー持ちとなります。通常は、修繕費や固定資産税などの支払いに備えて家賃の一部をストックしておくのですが、返済がカツカツの場合は自己資金から捻出するしかありません。自己資金が底をついてしまえば賃貸経営を続けることは難しくなるでしょう。フルローンに限ったことではありませんが、余裕をもった返済ができるかどうかをしっかり考えて借入額を決めることが大切です。

金利上昇時のダメージが大きい

ご存じのとおり、日本ではバブル景気が終了した1991年あたりから低金利が続いています。安い金利で融資が受けられるのは嬉しいことですが、いつ金利が上がるとも限りません。

不動産投資ローンのほとんどは、市況と連動して金利が変わる変動金利型が採用されています。そのため、金利の上昇は返済額に大きく影響することに注意しなくてはなりません。月々の返済が増額されることはもちろん、最終的な総返済額も膨らみます。特に借入額が大きいフルローンでは大きなダメージとなるでしょう。

金利上昇のリスクに備えるには、こまめに繰り上げ返済をして借入元本を減らしていくのが有効とされています。ただし、事業の面では家賃収入の残高が少ないことがマイナスに響くことがあります。無理に返済を急ぐのではなく、より金利の低いローンへの借り換えを検討するのもひとつの方法です。

金融機関の融資審査が厳しい

マイホーム購入に利用する住宅ローンに比べて、不動産投資ローンは審査基準が厳しめになっています。多額の融資は金融機関にとって大きなリスクを負うものです。特にフルローンともなれば、より慎重に審査が行われるでしょう。近年は不動産投資ローン関連の社会問題が多発したこともあり、フルローンの利用は以前に増して難しい傾向にあるようです。

融資審査が厳しくなった背景

金融機関の融資審査が厳しくなったそもそもの発端は、2015年1月の税制改正だといわれています。改正により相続税が大幅に増税されたため、相続税の軽減につながる不動産投資に注目が集まり、アパート経営を始める人が急増しました。当時はまだ基準も緩めで、ある程度の資産を持つ人なら比較的スムーズにフルローンが利用できたようです。不動産会社や金融機関は積極的に融資の利用を勧め、競争が過熱した結果、2018年以降は不動産投資に対する不正融資が相次いで発覚しました。たびたびニュースでも取り上げられたシェアハウスのサブリース事業破綻や、フラット35の不正利用などを思い出す人も多いでしょう。

こうした事態を重く見た金融庁は、金融機関への監視を強化します。融資審査についても金融庁の指導によって厳しい基準が設けられ、フルローンの利用はかなり難しくなりました。現在、多くの金融機関では、不動産投資ローンの利用に頭金を入れることを条件にしています。しかしながら、フルローンが利用できる可能性が全くないわけではありません。次の段落ではフルローンの審査基準について解説するので、ぜひ参考にしてください。

フルローンの審査基準

フルローンの申し込みに対しては、主に次の項目について審査が行われます。

・申込者の属性

・物件の担保価値

・返済比率

・不動産投資の経験

また、共同担保を差し入れることを条件にフルローンを認める金融機関もあります。審査内容や基準は金融機関ごとに異なるため一概にはいえませんが、どのような点が審査されるのかを解説します。

利用者の属性

融資審査において、まず重要視されるのが利用者の個人属性です。利用者本人の経済的・社会的背景のことを属性といい、属性が高い人ほどフルローンを受けられる可能性が高い傾向にあります。具体的には、年収・職業・勤務先・勤続年数・家族構成・自己資金の有無などがあげられます。

金融機関では返済が滞ることを危惧するため、安定した収入があるかどうかをチェックします。そのため、景気に左右されず一定の給与が得られる公務員や、倒産リスクの少ない上場企業の会社員などは、高く評価される傾向です。医師や弁護士など社会的信用の高い職業も、審査に有利とされています。また、勤続年数の長さは収入の安定性を示す材料として評価されます。少なくとも3年以上の勤続がなければ審査に通るのは難しいかもしれません。

安定した収入のほかにも預貯金や保有株などの資産があれば、高い評価が得られる可能性があります。家賃収入が得られない場合にも十分な返済原資があることをアピールしてみてください。

物件の担保価値

融資付けの際、金融機関は対象となる物件に抵当権を設定します。ローンの契約者がどうしても返済できなくなった場合、強制的に物件を売却して現金を回収するためです。ただし、物件が売却できなければ融資を回収することができません。そこで、融資対象の物件に担保としての価値があるかどうかが審査の対象になります。

物件の審査では、主に構造・築年数・立地などがチェックされます。構造では法定耐用年数が長いRC造・SRC造、築年数は新しいほど審査に通りやすい傾向にあるようです。また、駅から近いなど立地条件の良い物件も、収益性が期待できるとして高く評価されます。入居率が維持できるか、安定した家賃収入が見込めるかなどもチェックされるので、エリアの賃貸需要も大切な要素になることを意識してください。

返済比率

返済比率とは、年収に占める年間返済額の割合を示す数値です。年間返済額は申し込もうとしている不動産投資ローンだけを指すのではなく、すでに利用しているローンやキャッシングなども含まれることに注意してください。金融機関の多くは返済比率の上限を30~35%ほどとしています。上限を超える場合はフルローンはもちろん、融資そのものを断られる可能性があります。

不動産投資の経験

これまでに不動産投資の経験があり、成功している実績があれば、融資審査に有利に働く可能性があります。返済比率が上限を少々超えていても、過去に融資を受けたのと同じ金融機関で実績を評価してもらえればフルローンが受けられるかもしれません。

初めての不動産投資でフルローンを希望する場合は、物件を購入する不動産会社に提携している金融機関を紹介してもらうという手もあります。不動産会社と金融機関との間には過去の取引から信頼関係が築けています。不動産会社を窓口にすることで融資の審査がスムーズに進むことが期待できるでしょう。

共同担保

どうしてもフルローンを利用したい場合には、共同担保を差し入れることで融資が受けられるかもしれません。共同担保とは、購入したい物件のほかに、すでに所有している不動産を担保にすることをいいます。自宅・セカンドハウス・収益用マンション・土地など、自身が所有している不動産なら共同担保として提出できますが、すでにローンの返済が終わっていることが条件です。金融機関によっては、残債が半分以下まで減っていれば担保として認めてくれることもあります。ただし、資産価値が少ない物件は認められないこともあるので、確実な方法ではないことを理解しておいてください。

フルローンがおすすめできる人

フルローンのメリット、デメリット、審査基準に関して記載をしてきました。フルローンが利用できる場合におすすめできる人はメリットを享受しながらデメリット部分の備えができる人です。

例えば、物件価格の30%以上の自己資金があるような方は有事の際にも安心ができます。

自己資金が500万円あり、1,500万円の物件を購入しようとすると本来であれば10〜20%の頭金が必要になります。もし自己資金300万円しかない人が全額頭金に当ててしまうと自己資金がなくなってしまうため万が一なにか起こった際が不安ですが、物件価格の30%以上あれば頭金に当てていたとしても少々余裕があります。

フルローンは物件価格の全額を借り入れするため、どうしても返済比率が上がります。万が一突発的な費用が重なっても自己資金がある方はフルローンはおすすめできます。

また、ご自身の収入が高いもしくは別物件からの家賃収入でまかなえるなど別の収入源からの返済ができる環境にある方もおすすめできるでしょう。

フルローンでの失敗例

フルローンには自己資金を確保できるというメリットがありますが、一歩間違えればあっという間に自己資金を失ってしまいます。わかりやすい例として、フルローンで複数の区分マンションを購入したある女性の体験談を紹介します。

Aさんは都内の一部上場企業に勤める43歳の独身女性です。老後の資産形成を考えていたとき、不動産投資セミナーの宣伝に目が留まり、参加してみることにしました。不動産投資の仕組みはシンプルで、株やFXと比べるとリスクも大きくなさそうです。上場企業の正社員で勤続20年、年収700万円という自分の属性が融資審査に有利になることもわかりました。

高属性であることに加え、実家に住んでいるため住宅ローンなどの借入がないことや、老後の生活資金としてコツコツ貯めた預貯金なども評価され、Aさんは2つの区分マンションをフルローンで購入することに成功します。借入総額は4,500万円、30年間の元利均等返済で月々の返済額は約18万円です。購入した物件は以下のとおりで、合計22万円の家賃収入が得られることから十分返済していけると考えていました。

物件A:ファミリータイプ(家賃15万円)

物件B:ワンルーム(家賃7万円)

しばらくして物件Aが空室になります。ファミリータイプの物件は入居期間が長くなる傾向にありますが、一度空室になると次の入居者がなかなか見つからないという弱点があります。入居者が見つかるまで、Aさんはローンの返済や管理費・修繕積立金などの支払いを貯金から捻出しなければなりません。さらに物件Bで事件が発生します。なんと入居者が室内で亡くなっていたのです。幸い発見が早かったので復旧はスムーズでしたが、事故物件として扱われるため次の入居付けに苦戦することになります。

家賃収入はゼロになってしまい、老後の資産形成どころか、せっかく貯めた貯金も目減りする一方です。無理な購入はすべきではなかったと後悔しながら、売却のタイミングを計っているAさんの体験談でした。

フルローンの失敗対策

フルローンで物件を購入する際には、自己資金を手元に残すことができるなどのメリットがある反面、失敗事例のように失敗する可能性がある点には注意点したいものです。

フルローンで不動産投資をする際に失敗を避ける対策は以下の3つがあります。

・返済比率に気をつける

・物件評価に気をつける

具体的に見ていきましょう。

返済比率に気を付ける

フルローンにするということは、借入金額が多くなります。そのため、毎月の返済金額も必然的に多くなるため、家賃収入に対してローンの返済額が高くならないように注意が必要です。

理想は40%〜50%以下と言われていますが、物件内容によっては60%以上になるケースもあります。

不動産会社の営業マンがあまり返済比率に関して説明がないこともあるため、ご自身で確認するようにしましょう。

返済比率が高くなると、空室リスクや修繕、税金などの経費、管理費などによってキャッシュフローに支障をきたす可能性が高くなります。

フルローンで返済比率を下げるコツ

フルローンでも返済比率を下げるためには、以下の点を確認するようにしましょう。

・利回りの高い物件を選ぶ

・長く融資期間をとる

・金利の低いローンを選ぶ

しかしながら、利回りが高く長い期間の融資を取ることは探してみると非常に難しいです。というのも、利回りが高い物件は築年数の経っている物件のため、融資期間が伸びないことにも影響します。利回りと返済比率のバランスを意識しましょう。

物件評価に気をつける

銀行からフルローンの評価をもらったとしても物件評価が十分に高いというわけでは無い点は認識しておきたい点です。つまり、フルローンの評価、融資を受けられたからといってその不動産投資が必ず成功するわけでは無いということです。

万が一、物件の売却を短期で行わないといけなくなった際に、フルローンですと借入金額が多く短期ではローン残債の返済も進んでいないことから、売却時に評価と残債の差が発生することにも繋がります。

フルローンが出た、つまり評価も高い物件であるというようには思わずに有事の際の自己資金は残しておくようにしましょう。

借入額を決めるときは返済のゆとりを考えることが大切

フルローンには自己資金を手元に確保できるメリットがありますが、借入額が大きくなるため返済負担も重くなりがちです。家賃収入が得られなければ自己資金で返済を続けなくてはならないので、手元に残した自己資金もすぐに底をついてしまうかもしれません。フルローンの利用は金融機関にとってもリスクが大きく、融資を断られるケースがほとんどです。融資審査をスムーズにするためにも、頭金を準備すること、ゆとりをもった返済計画を立てることを意識するようにしてください。

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